イスラエルの入植は国際法違反――バチカンとWCC(海外通信・バチカン支局)

マイク・ポンペオ米国務長官は11月18日、イスラエルによるヨルダン川西岸や東エルサレムでのユダヤ人の入植活動が「国際法に違反しない」という見解を明らかにした。この米国による一方的な判断は、国際社会の批判を浴びていた。

米国のオバマ前大統領は、イスラエルとパレスチナの境界線を「イスラエルが占領地(東エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザ地区)とした1967年の第三次中東戦争より以前の境界線に基づいて決めるべき」という立場を表明していた。しかし、トランプ大統領はその伝統的な見解を覆した。

聖座(バチカン)は11月20日、「(米国による)最近の判断がイスラエルとパレスチナの和平プロセスと、すでに不安定な中東情勢をさらに危機に陥れる」という声明文を発表。「長引く紛争の最終的な解決に至る唯一の道は、(イスラエル、パレスチナの)2民族2国家の解決策であると再確認」した。

バチカンは、「イスラエル国家が国際社会から認められた境界線内で平和と安全のうちに存在していく権利を支持するが、同時に、同等の権利がパレスチナ人にも与えられ、それが尊重、実現されていかなければならない」と主張している。

さらに、「双方が国際社会からの支持と、国連決議案の順守を通して直接交渉することで、2民族の正当な希求を考慮する、適切な妥協を見いだしていけるように」と表明。イスラエルとパレスチナの境界線の問題は、双方の直接交渉で決めることであり、他国は一方的な判断を下さず、国際社会は交渉を支援すべきとの立場を示してきた。

世界教会協議会(WCC)は11月25日、米国の判断が「法的に誤っているだけでなく、パレスチナ人とイスラエル人の双方が追求する和平に敵対するこの行為をWCCは拒否する」という声明文を公表。「米国政府の見解は、自らの長期間にわたる政策を覆すものであり、幅広い国際社会の法的判断と、国連を通して長期間にわたって施行されてきた政策に矛盾する立場へと米国を追い込む」と指摘した。

WCCもバチカンと同様に、「イスラエルは、国際社会によって認められた国境線内で平和と安全のうちに存在する権利を有するが、同等の権利がパレスチナ人にも認められなければならない」との立場を表明している。

「朝日新聞」電子版は11月21日付の記事で、英、仏、独、ポーランド、ベルギーの欧州連合(EU)理事国が「『占領は国際法違反だ』として、イスラエルに対して入植活動をやめるよう求めた」と報じている。「また、イスラエルとパレスチナの『2国家共存』を『双方の願いを正当に実現する唯一かつ現実的で、実現可能な道筋』とした」とも伝えた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)