バチカンから見た世界(83) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

「人類の友愛に関する文書」実現のため高等委員会設置

「人類の友愛高等委員会」の初めての会合が9月11日午前8時半から、バチカンにあるローマ教皇居所の聖マルタの家で開催された。この高等委員会とは、教皇フランシスコとイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長が今年2月にアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで署名した「人類の友愛に関する文書」の精神を世界に広く伝え、その実現を果たすためのもの。UAEの提案によって設立された。

健康の優れないハリーファ大統領に代わり、実質的に政権を担当し、活発な外交活動を展開するのみならず、イスラーム過激主義との闘いも遂行しているムハンマド皇太子は、高等委員会設置の目的を「UAEは、世界における平和の促進、友愛と平和共存の原則を広く伝えていく。また、あらゆるイニシアチブを支援する」と説明した。高等委員会に託された任務は、「人類の友愛の文書」に記された目的を実現するための保障の枠組みを設け、必要なプロジェクトをつくり、各地域や国際レベルで実行していくこと。同時に、この歴史的な文書の基本的な理念を広く普及させていくため、諸宗教指導者、国際機関の責任者ら多くの識者と出会っていくこととしている。また、文書の精神を各国の法律の中に反映させていくため、各国の立法をつかさどる議員らとの交流も含まれる。

高等委員会の委員長にバチカン諸宗教対話評議会議長のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット司教(10月に枢機卿)、事務局長にアズハル総長の顧問であるモハメド・マフムード・アブデル・サラム判事が就任。委員には、アズハル大学のモハメド・フセイン・マフラサウィ学長、教皇フランシスコの秘書であるヨアンニス・ラフツィ・ガイド神父、アブダビ観光文化庁のモハメド・カリファ・アル・ムバラク長官、ムスリム長老評議会のスルタン・ファイザル・アル・メイティ事務総長、UAEの作家・ジャーナリストであるヤッセル・ハレブ・アル・ムハイリ氏が就いた。