RSE「第10回宗教と環境シンポジウム」 中央学術研究所の深田研究員が報告

中央学術研究所が参画する「宗教・研究者エコイニシアティブ」(RSE、代表=竹村牧男東洋大学学長)主催の「第10回宗教と環境シンポジウム」が9月7日、東京・文京区の東洋大学白山キャンパスで行われた。テーマは『海と環境を宗教から考える』。宗教者や研究者、市民ら76人が参加した。

シンポジウムでは、上智大学神学部の吉川まみ准教授が『SDGsにおける環境問題への取組と宗教からの視点』と題して基調講演に立った。この中で吉川氏は、ローマ教皇フランシスコの回勅「ラウダート・シ」では、環境問題は大量生産、大量消費という価値観に根ざした経済発展による「使い捨て文化」によるもので、その基は人間の内面にあると指摘していると解説。「人間性の刷新なしに、自然との関わりを刷新することは不可能」「適切な人間論なしにエコロジーなどはあり得ない」とされ、環境問題は「信仰上の罪」との考えが示されていると話した。

その上で、被造物である人間は、自然の秩序を守り、調和を図る責務が神から与えられていると説明。そのことを再確認し、宗教の違いを超えて共に環境問題に取り組むことが重要と述べた。

次いで、東京大学の山本良一名誉教授と竹村学長がパネル発表を行った。『気候の非常事態と海の非常事態』をテーマに発表した山本氏は、温室効果をもたらす熱エネルギーの約9割が海水に吸収され、海の生態系が変化している現状や、世界では900を超える国や自治体が「気候非常事態宣言」を発表しているのに対し、日本では皆無である実情に危惧を示した。

竹村学長は、『海洋のプラスチック汚染とその対策』と題する東洋大学生命科学部教授の柏田祥策氏の発表内容を本人に代わって説明。世界各地の海岸に大量のプラスチックごみが漂着している状況を紹介し、病原菌や化学物質が付着したマイクロプラスチックで汚染された魚介類を人間が摂取することで、人体に悪影響を及ぼす可能性があると指摘した。

本会の環境保護活動を説明する深田研究員

続いて、金光教「環境と倫理」研究会の松本光明代表と中央学術研究所の深田伊佐夫研究員が宗教者の立場から実践報告を行った。

『環境にやさしい“KGEI”―立正佼成会の環境配慮活動―』をテーマに発表した深田氏は、教団本部や各教会の環境保護活動を紹介。KGEI(K=紙資源の削減、G=ごみの削減と分別による資源化、E=エネルギー使用量の削減と太陽光発電の活用、I=「一食(いちじき)を捧げる運動」の展開)を合言葉に、「環境マネジメントシステム」(EMS)の導入や太陽光発電の設置、裏紙の再利用などに取り組んできたこれまでの経緯を詳述し、「身近な生活実践に取り組むことが、環境問題を“自分事”として捉える一番の近道。私たちがこれまでの生活や生産活動などのあり方を改め、共生の世界をつくっていくことが必要」と語った。

この後、質疑応答が行われ、活発に意見が交わされた。