WCRP/RfP 第10回世界大会 シュタインマイヤー大統領の開会挨拶(要旨)
宗教は平和を実現するためのもの
ここリンダウのように平和で静かな場所であっても、過去には宗教の名を借りて起きた「三十年戦争」(1618~1648)という歴史があります。この宗教戦争は多くの犠牲者を出し、貧困を生み、町を破壊し、人類を脅かしました。
宗教と信仰は、悪い意味で使われることがあります。特に宗教とは無関係な政治に利用されるのも事実です。かつてのヨーロッパだけでなく、現在でも宗教的思想が暴力を生み、他の宗教や信仰を持つ人に対する憎しみをもたらすことが起きています。「宗教はひどいもの」「慈悲のないもの」という見方をする人を生み出してもいます。だからこそ、WCRP/RfPは行動を通じて世界に宗教や信仰の素晴らしさ、人々の人生を形づくる重要な存在であることを示していく必要があるのです。
宗教は戦争を正当化するものであってはなりません。平和を実現するためのものであり、そうでなくてはならないのです。宗教は平和に尽くすもので、人類に貢献できるもの――RfPはそのことを思い出させてくれる存在です。
それぞれの宗教は個別です。そして、どの宗教も世界の真理を説いています。しかし、それはあくまでも「平和」を目指すための論理であることを忘れてはなりません。戦争や紛争、テロを起こすことは、どの宗教の教義や倫理にも反しています。諸宗教の協力によって、平和のための空間が生まれ、人々が平和的に出会うことができる――これを築くのが私たちの活動です。
ヘブライ語の「シャローム(平和)」という言葉には、「尊厳を持った人生を生きる」という意味が含まれています。平和なくして、そうしたことは実現しません。これはもちろん、政治の役割ではありますが、同時に、地球上の人々の尊厳が保たれるには、宗教間の平和が欠かせないのです。
現在、全ての宗教団体が、国連が掲げる持続性を可能とする発展の目標に向け、一丸となって取り組んでいます。私は外務大臣の経験を通して、コロンビア、モザンビーク、ミャンマーなどでより良い政治や政策の提言、和解などに教会や宗教団体が重要な役割を果たしていたことを知っています。この重要性を認識し、宗教は最も大きな社会活動であるとの考えから、ドイツでは外交政策と宗教を関連付け、RfPの活動をサポートしています。ドイツでこのような世界大会を開催できたことは、とても光栄です。
私たちはそれぞれ信仰は違うものの、憎しみや暴力に反対し、宗教の名において暴力を使ってはならないという信念を共有しています。このメッセージをリンダウから世界に伝えたいと思います。
聖フランシスコの「平和への祈り」でスピーチを結びます。
「主よ、私をあなたの平和の道具にしてください。憎しみがあるところに愛を、争いがあるところに赦(ゆる)しを、分裂があるところに一致を」
大会の成功を心から祈っています。
(写真提供・WCRP/RfP日本委員会)