「スリランカで諸宗教間和解評議会創設」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

キリスト教の復活祭(4月21日)の日に、スリランカでキリスト教の教会とホテルを標的とした連続爆破テロが発生し、250人を超える死者が出た。同国では今も、人々に不安や不信感が募っており、テロによる混乱が続いている。

こうした状況を打開していくため、ウィクラマシンハ首相はこのほど、同国で最も信徒が多い仏教の代表者(僧侶)たちからの提案を受け入れ、諸宗教間和解評議会の創設を公表した。バチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」(6月19日付)によると、ウィクラマシンハ首相は「この評議会は国内に存在する全ての諸宗教共同体を対象とし、それぞれの宗教の活動を保障していくため、創設される」と説明した。

同国では6月、イスラームの聖典に厳格なスンニ派の「ワッハーブ派」の中でも過激な原理主義思想を持つ者、また「イスラーム国」(IS)を名乗る過激派組織に属してシリアやトルコなどで訓練された戦闘員たちの同国北東部への流入に対して十分な対策を講じなかった責任を問われ、ムスリム(イスラーム教徒)の閣僚1人(投資庁)や県知事2人が辞職した。こうした政冶家たちの辞職を求める国会での動議は、仏教僧の国会議員であるアトゥラリエ・ラタナ師によって提出され、カトリック教会のマルコルム・ランジス枢機卿(コロンボ大司教)を含む、他の諸宗教指導者たちの支持を得ていた。予想されていた辞職だった。

ランジス枢機卿は同月、「連続爆破テロは、偶発的な事件ではなく、長期間にわたる政策の(欠如の)結果である」とし、「スリランカの独立(1948年)以来、この地は(民族や宗教間の紛争によって)血に染まってきた」と発言。政治が対処を怠ってきたと批判した。また、同枢機卿と数人の高位の仏教僧は、国際テロ組織から国を守るために、政府が米軍基地を国内へ招致するための交渉を秘密裏に行っているとの報道に触れ、「国家の主権を侵害するもの」と反対の共同声明を発表した。

仏教とカトリック教会の高位聖職者たちは、むしろ、「過激派組織の活動を禁じることによって、恒久的和平の保障と法の尊重を推進していくように」と政府に要請している。

一方、政府は4月のテロ後、安全保障上の理由から、公の場で顔を覆う衣服の着用を禁止した。ムスリムの女性が全身を覆う服装(ブルカやニカブ)を想定してのことだ。また、イスラームに対しては、地域のモスク(イスラーム礼拝所)やムスリムの経営する商店などへの攻撃も増加していると報道されている。このほか、信徒たちがキリスト教の教会や他の宗教施設へ入る際、バッグを持参することや、礼拝後に教会前で懇談することも禁じられている。

児童たちの通学に際し、ランドセルも透明なプラスチック製のものが推奨されているという。こうした状況の中で、テロ攻撃の再発に神経をとがらせる政府と国民は、テロ防止の第一歩として、諸宗教間和解評議会の創設を選んだのだ。

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