被災地復興を見据えた地域づくりとは 日本NPOセンターがシンポジウム
東日本大震災からまもなく6年を迎えるに際し、『復興の先を見据えた地域づくり――住民の主体性を考えた復興支援のあり方』をテーマにしたシンポジウム(日本NPOセンター主催)が1月20日、宮城・TKPガーデンシティ仙台で行われた。NPO関係者や市民ら約100人が参加した。
今回のシンポジウムは、同センターが岩手、宮城の両県で、NPO3団体と3年間にわたって東日本大震災の復興支援に取り組んできた活動の成果や今後の課題を共有することが目的。当日は、NPO法人「陸前たがだ八起プロジェクト」の蒲生哲代表、NPO法人「アットマークリアスNPOサポートセンター」の川原康信事務局長、NPO法人「ウィメンズアイ」の栗原美知子氏が活動報告を行った。
蒲生氏は、震災から時間が経つにつれ、住民の経済力に加え、支援団体の有無や支援を十分に受けられるか否かで、被災者間に「壁」が生じていると指摘。復興から取り残される人が出ないよう、陸前たがだ八起プロジェクトが岩手・陸前高田市の仮設住宅の住民に対して行っている健康維持やコミュニティーづくりを説明した上で、「人と人との触れ合いが生まれると思いやりが生まれ、地域が一つになっていき、人々が元気になることに気づきました。このことをお伝えし、これからも継続していきたい」と語った。
続いて川原氏は、釜石市内の仮設住宅で「ひきこもり」の防止や交流の促進を願って実施する「お茶っこサロン」に言及。高齢者が若い世代と交流する中で心が前向きになっていったことから、「多世代との交流が心の復興には必要」と強調した。また、同サロンの参加をためらう高齢男性との触れ合いを語り、サロンへの声かけを通じて住民一人ひとりの様子を知る大切さを述べた。
一方、栗原氏は、南三陸町で地元の母親たちと協力し、子供を育てやすい環境づくりの取り組みを紹介した。育てやすさの目安は、高校卒業後に「地元に帰ってこられる環境かどうか」と述べ、就職や共働きが可能なまちづくりの必要性を訴えた。
この後、パネルディスカッションが行われ、認定NPO法人「市民活動センター神戸」の理事で公益財団法人「ひょうごコミュニティ財団」代表理事の実吉威氏、公益社団法人「中越防災安全推進機構 震災アーカイブス・メモリアルセンター」のセンター長を務める稲垣文彦氏、NPO法人「いわて連携復興センター」代表理事の鹿野順一氏が登壇。長岡技術科学大学准教授で「震災がつなぐ全国ネットワーク」共同代表の松田曜子氏がコーディネーターを務めた。
この中で、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震からの復興の事例が報告された。パネリストからは、行政ができることは建物や道路などハード面の復旧といった声が多く聞かれ、「住みやすいまちの仕組み作りなどソフト面は住民が担っていかなければいけない」「支援団体やボランティアなど外部の協力、復興に向けた一つ一つの成功体験の積み重ね、その体験の共有などを通して、一人ひとりが持つ主体性を発揮できる環境を整えることが重要」など活発な議論が展開された。