北朝鮮の核開発を考える国際シンポ 核廃絶は対話による信頼の醸成から
北朝鮮の核開発を巡る緊張状態が続く中、国際シンポジウム「朝鮮半島の核の脅威への対応――北東アジア非核兵器地帯を考える」が3月24日、明治学院大学白金キャンパスで開かれた。日本パグウォッシュ会議、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、明治学院大学国際平和研究所(PRIME)の共催で行われた同シンポジウムは、核を巡る近年の国際情勢を学び、核の脅威を取り除くための今後の取り組みを専門家と市民の対話を通して検討する連続講座。第1回の今回は、約40人が参加した。
当日は、梅林宏道・ピースデポ特別顧問(長崎大学核兵器廃絶研究センター客員教授)、アンゲラ・ケイン元国連軍縮担当上級代表、沈丁立・復旦大学教授、遠藤誠治・成蹊大学教授が登壇した。
それぞれの講演では、北朝鮮が核兵器の開発を進めてきた理由は、「米国の核の脅威への対抗」と「核の抑止によって自国の安全を確保するため」だと指摘された。ケイン氏は、米・英・露・仏・中の5カ国以外の核兵器の開発と保有を禁止した核不拡散条約(NPT)について北朝鮮は不公平性を指摘し、自国の保有を主張していると述べ、北朝鮮の不安定で流動的な行動を抑制するためには軍事力による威嚇や経済制裁が必ずしも有効な手段ではないと主張した。
4月以降に予定されている「南北首脳会談」や「米朝首脳会談」に触れた遠藤氏は、金正恩・朝鮮労働党委員長が他国との対話に乗り出したのは抑止力としての核開発が実現できたためではないかと分析。一方、沈氏は、こうした会談を好機と捉え、北朝鮮の限定的な核兵器保有を認めながら、対話によって徐々に信頼を築き上げていくことが核廃絶につながると踏み込んだ発言を行った。さらに、対話に応じた北朝鮮が経済援助を求めてきた際には「より多くの国が関わることが不可欠。そのことで各国の負担も分散される」とし、核廃絶を実現するために国際社会が取るべき姿勢を示した。
この後、日本パグウォッシュ会議代表の鈴木達治郎氏がコーディネーターを務め、パネル討論が行われた。この中で梅林氏は、“北朝鮮の体制は変わらない”とする日本国内の世論が国会など政治の場にも強く影響していると説明。このことが対話の道を閉ざし、北東アジアの非核兵器地帯の構築をより困難にしているとし、「北朝鮮が悪いという考えを捨て、長い時間をかけて交渉や対話に臨む忍耐が必要」と語った。