教団行事などで手話通訳を担う会員有志のサークル「しゅわっち」 発足から20年
立正佼成会東京教区の手話サークル「しゅわっち」が今年、活動開始から20年の節目を迎えた。同教区の会員ボランティアにより発足して以降、現在まで、仏の教えを求める聴覚障がい者のために行動する姿勢を貫く。教団行事や教会式典などで行う手話通訳は、多くの人に喜ばれている。
1996年に普門館大ホール(東京・杉並区)で行われた「青年幹部大会」で初めて、手話通訳者による同時通訳が導入された。その際、聴覚障がいのある会員から、「今回のように、これからも皆さんと同様に教えを学びたい」との要望が寄せられた。これを受け、東京教区で手話に関心を持つ会員や手話経験のある会員を対象に講習会を開催。97年9月、「しゅわっち」が発足した。
現在のメンバーは約30人。2月から11月まで毎月3~4回、杉並区手話サークル「杉の会」に所属する手話通訳者を講師に招き、杉並教会道場の一室で講習会を実施している。メンバーは入門、中級、上級の3クラスに分かれ、日常会話や仏教用語の表現方法など、手話技能の習得に励む。
同サークルに所属する板橋教会の女性会員(68)は、仏教用語の手話通訳について、こう語る。「発足当時は、仏教用語の意味を正確に伝える手話がなかったので、単一の動作で意味が伝わるよう、元中央学術研究所所長の北貢一さんや、『杉の会』の高橋博さんのご協力によって手話を編み出しました。例えば、『菩薩行』は読み仮名を指文字で表していたのを、『右手を胸に当てて一回転させ(=自分)、両手を前に出して捧げる(=あげる)』ことで、『自分の全てを捧げる』という表現に替えたのです」。
修得した手話技能を生かし、東京教区各教会の式典で手話通訳を実施。年に一度開催され、今年で15回目となった「耳の聞こえない人・聞こえにくい人の参拝(アイラブ団参)」を初回から企画し、本部行事となった今は裏方として支えている。
また、本会本部の手話通訳派遣制度に登録し、地方教会の式典に出向くメンバーもいる。これにより、耳の聞こえない人や聞こえにくい人たちから「式典に初めて参加し、皆と一緒に感動できた」「体験説法の通訳で思わず涙を流した」などの感想が届くようになった。
代表を務める杉並教会の男性会員(63)は、「耳の聞こえない人が、全国どこの教会でも、手話付きの式典や行事、法座に参加でき、教えが伝わるようにしたい」と希望に胸を膨らませる。一方、担い手不足が大きな課題という。「結成当時のメンバーが高齢化しているので、20代から40代の若いメンバーをもっと増やしたいと考えています。手話によるコミュニケーションが広がるよう、今後も活動を充実させたい」と語った。