庭野平和財団「第2回現代社会の問題を考えるセミナー」 日韓の歴史から現状踏まえ、関係構築にさらなる対話を

3人が共通して言及したのは、両国の歴史認識の違いで、これをあいまいにしたまま、1965年に国交正常化を図る日韓基本条約が結ばれた点。それまでの14年間、1910年から45年までの「韓国併合」を不法とする韓国と、合法とする日本の間で、交渉が進められたものの決着せず、どちらとも解釈できる日韓請求権協定が結ばれ、問題が残ったという指摘だ。

これを踏まえ、李氏は、1987年の韓国の民主化以降、日本統治下で被害を受けた人々による訴訟が相次ぎ、歴史問題が噴出し、それによって、両国は65年の枠組みを維持しつつ、条約を補完する人道的な措置を取ってきたと説明。例として、98年の日韓パートナーシップ宣言には植民地支配に対する日本の謝罪と反省が表され、2010年の菅直人首相談話では植民地支配が韓国の人々の意に反して行われたという趣旨が明記されたことを挙げた。「歴史問題は根気強く溝を埋めるしかない」と述べ、安易に終止符を打とうとせず、歴史の検証とさらなる対話が必要と発言した。

権氏

一方、権氏は、軍事政権を市民の力で打倒した韓国で、現在活発化する市民運動についても紹介。朴槿恵(パク・クネ)前大統領を退陣に追い込んだキャンドル革命(2016、17年)は、大統領をめぐるスキャンダルだけでなく、国家権力の監視や格差・競争・不安社会の是正を求める市民の動きが重なって起こったと説明した。また、革命の大規模集会は民主主義を守る「祝祭」として展開され、延べ1500万人が参加したことに触れ、多くの国民に政治への関心と自覚がこれまで以上に広く共有されたと解説。新たな形で国家権力の暴走を防ぎ、不正義に対し行動を起こす韓国市民との向き合い方を考えていく必要があると述べた。