『企業倫理』テーマに オーストリア・アルプバッハで第4回「行動の倫理」会議

22日、ホテルで開催された『公共の利益への企業責任に関する宗教的視点』をテーマにした会合

第4回「持続可能で不可欠な開発に向けた行動の倫理」会議(通称=「行動の倫理」会議)が8月21、22の両日、オーストリア・アルプバッハのホテルなどで行われた。世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)国際共同議長として立正佼成会の庭野光祥次代会長が出席し、今回の全体テーマである『企業倫理』について、仏教の視点からスピーチした。

会議は、ローマ教皇庁科学アカデミー、同社会科学アカデミー、WCRP/RfP国際委員会に加え、欧州フォーラム・アルプバッハ(EFA)との共催によるもの。同科学アカデミー会長のマルチェロ・サンチェス・ソロンド司教をはじめとする諸宗教指導者や、WCRP/RfP国際委のウィリアム・ベンドレイ事務総長、国連事務総長特別顧問のジェフリー・サックス博士ら経済学者、企業経営者、政治家、研究者、NGO代表など約40人が参加した。

同会議は、ローマ教皇フランシスコによる回勅「ラウダート・シ」に示された、「地球という私たち共通の家について全世界の人と対話をしたい」との願いを受けたもの。「気候変動」「貧困」「移民」「暴力」など地球規模の課題に対し、さまざまな分野の専門家が連携を図り、持続可能な開発に向けて倫理的な行動を促進するための方針を示していく。2年間で計10回開催される予定(当初から2回追加)で、昨年10月に第1回会議が開かれた。WCRP/RfP国際委は同会議の運営面で協力している。

22日には、『公共の利益への企業責任に関する宗教的視点』の会合が行われ、WCRP/RfP国際共同議長のジョン・オナイエケン枢機卿(ナイジェリア・アブジャ大司教)や、同国際共同会長のムハンマド・アル・サマック博士(ムスリム・キリスト教徒間対話評議会事務総長)、デビッド・ローゼン米国ユダヤ人協会諸宗教対話部長、光祥次代会長らがスピーチした。

この中で、光祥次代会長は京都市の龍安寺(臨済宗妙心寺派)にある、つくばいに刻まれた「吾唯足知(われただ足るを知る)」という言葉の意味から「少欲知足」の精神を紹介。物欲に駆られた生活よりも、命と人権が守られ、簡素で心豊かな暮らしに満足する心を養うことが本当の幸せであり、人類に共通する幸福であると指摘した。また、「私は私以外の全てに支えられて生きている」という仏教の智慧(ちえ)を企業活動に当てはめた時、取引業者、消費者、労働者といった直接的に関わる領域の人たちだけでなく、「世界中の全ての人々がステークホルダー(利害関係者)であるという価値観が生まれます」と強調。人類の幸福のため、持続可能な開発と社会的な責任を果たすことが本来の経済活動のあり方であると語った。

さらに、「心が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる」といった趣旨の庭野日敬開祖の言葉を挙げ、「こうした志を持つ人が一人でも増えれば、世界が必ず変わると信じています」と結んだ。

また、2日間の会議では、『企業の権力と刑事免責』『企業責任に関する経営的視点』『企業の行為と公共の利益との融合――現実的な解決策を求めて』などの会合を実施。欧米における企業倫理の歴史や、現代の金融機関の投資活動と企業の社会的責任との矛盾点などについて意見が交わされた。さらに、持続可能な開発に向けた企業責任のあり方について、宗教や政治などの観点から議論が重ねられた。

これに先立つ21日には、アルプバッハ会議センターで全体会合「持続可能な開発に向けた宗教の責任」が開かれた。

21日にアルプバッハ会議センターで行われた全体会合の席上、あいさつする宗教指導者6人

冒頭、キリスト教、イスラーム、ユダヤ教、ヒンドゥー教、仏教の宗教者6人が登壇し、あいさつ。次いで、これに出席した欧州フォーラム・アルプバッハに所属する青年200人が6グループに分かれ、各指導者それぞれのグループに1人ずつ入り、ディスカッションが行われた。

この中で、グループの青年を前にした光祥次代会長は、気候変動やグローバル経済による格差の拡大、過激主義の蔓延(まんえん)による暴力の連鎖といった諸課題に対して、宗教協力を促進し、「神仏の望まれる人間本来の生き方に戻るチャンス」と受けとめて臨む重要性を明示。これまで人間が地球資源を享受して生かされてきたことを深く認識し、世界中の人々が少欲知足の精神に基づいた生き方に転換する大切さを呼び掛けた。