「バチカン諸宗教対話省長官のアユソ枢機卿が逝去」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
ウクライナは問題ではなく解決策の一部だ――ロシアの侵攻から1000日
ウクライナの首都キーウが3日間で陥落するだろうとの予想で始まったロシアによるウクライナ侵攻。11月19日、2022年2月24日の侵攻開始から1000日が経過した。停戦に向けた交渉の可能性はいまだ見えず、厳冬を見越して、ロシア軍はウクライナのインフラ(特に配電網)破壊のため、大量のミサイルやドローン攻撃を続けている。
イタリアの「ANSA通信」は11月20日、国際通信社「ロイター」の報道を引用しながら、ロシアが、「ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟断念」を条件に、「現在の両軍による占領4地区(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)の境界線を凍結」することで、「トランプ新米国大統領の仲介による停戦交渉に応じる意向だ」という、5人の現職ロシア政府関係者と1人の元関係者による発言を伝えた。ウクライナのゼレンスキー大統領も、ロシアによる軍事侵攻に終止符を打つための「勝利計画」を、2025年内に実現したい意向を表明している。
これに先立つ19日、ローマ教皇フランシスコは、ロシアによるウクライナ侵攻から1000日を機に、駐ウクライナ教皇大使を務めるヴィスヴァルダス・クルボカス大司教宛てに送った親書の中で、長い苦しみの期間にあっても、「(クルボカス大司教は)ウクライナ国民の傍らに残った」と感謝の意を表した。また、「重責にある政権担当者たちが、対話、和解、協調に向けた道程を辿(たど)るように」とアピールした。さらに、「人間の努力が実を結ばないように見える時であっても、神は私たちのそばに在る」「この期間に流された全ての涙を拭い去る時、神が涙を流させた者の責任を追及される」と戒めた。
ウクライナ国民が全土で毎朝9時に、「苦痛のうちに戦争で亡くなった全ての犠牲者を記憶するために黙とうを捧げる習慣」にも言及。「人間に対する助けが降り下る天(神)に向けた叫びをより強くするため、私も彼らと共に黙とうする」と約束した。さらに、あらゆる試練と苦に耐え続けるウクライナ国民に、「現代世界が忘れてしまった平和が、愛するウクライナの家庭、家、広場に再び響き渡るように」と切望した。
ウクライナ東方典礼カトリック教会の最高指導者であるスヴィアトスラフ・シェフチュク大司教も19日、「バチカンメディア」に掲載されたインタビュー記事の中で、「ウクライナが3日間で陥落すると言われていたが、あの日から1000日が経過し、当初のショックが再出発に変貌しつつある」と語った。現在、ウクライナで「希望なくして生きていくことは不可能だ」と訴え、戦争によって誘発されたショックが、「私たちの関係、特に自己自身との関係を刷新すること、すなわち各々(おのおの)が“私は誰なのか”“私が何をしなければならないのか”を問い直していくことを迫った」と話した。あらゆる見栄や体裁が剝ぎ取られ、その偉大さと弱さをも含めた人間存在の深い意味が問われ始めたからだという。
そして、「この抜本的な変革が、失われていた神との関係を再発見させた」と述べた。戦争による「国の破壊を通して、違った(形で)世界、社会、国が生まれ、多くの人々が2022年2月24日以前のウクライナはもう存在しないと信じている」のだ。未来への希望なくしては生きていけないウクライナだが、「その希望は、ウクライナの外にあるのではなく、私たちの内にあることにも気づいた」と話した。だが、「私たちの内にあり、ほとばしり出る抵抗、強靭(きょうじん)さ、希望の源泉が、(国際的には)政治、軍事、外交上の問題になっている」と嘆いた。侵略者(ロシア)は、ウクライナ人が持つ、この内的源泉をミサイル、爆弾、戦車によって破壊することを試み、多くの政治家たちが「ウクライナを問題として見なし始めている」という。