平和への思いを強めるために――第38回世界宗教者平和のための祈りの集い(海外通信・バチカン支局)

パリ市内の会場で行われた分科会

開会式の後、パリ市内にある21会場で分科会が開催された。この中では、移民問題や欧州の未来、地中海地域の役割や試練に遭う民主主義、アフリカ大陸が遭遇する挑戦やアジアでの信仰、貧者との連帯や核兵器と諸宗教対話など、平和を妨げるさまざまな問題について分析、討議し、解決策を模索していった。

『広島と長崎を記憶する――核兵器のない世界を想像して』と題する第10分科会では、根本参務が登壇した。この中で、「核兵器のない世界を実現するために、宗教者は道徳的、倫理的なリーダーシップを発揮し、平和と人道の価値観を広める重要な役割を果たさなければいけない」と強調。宗教者による「教育と啓発の重要性」についても伝えた。

『貧困者との連帯と平和』をテーマとした第6分科会では、篠原ACRP事務総長がスピーチした。篠原事務総長は、WCRP/RfP日本委など3団体が共催した「東京平和円卓会議」に関するイニシアチブを紹介。現在の紛争の原因を「我欲の衝突による結果」と分析し、「それぞれの宗教が堅持する信念を共有し合い、宗教者が協力・連携を深める中でこそ、厳しい道に光明を見いだし、進む先が拓(ひら)けていくと私は信じている」との確信を表明した。

24日午後、パリ市内各所で宗教別の祈りが捧げられた後、大火災からの復興工事が終盤にあるノートルダム大司教座聖堂前の広場で閉会式が行われ、ローマ教皇フランシスコのメッセージが代読された。教皇はこの中で、「アッシジの精神」は、「あまりに多くの戦争や暴力で引き裂かれた現代世界にとっての祝福」と述べ、同精神が、「対話と諸国民間の友愛の帆にとって、より強い追い風となるように」と願った。さらに、「諸宗教が、自国、自民族至上主義、ポピュリズムを扇動する手段となる誘惑に屈しないようにしなければいけない」と訴えた。

最後に、参加した諸宗教指導者たちによって署名された「パリ宣言文」が読み上げられた。同宣言文は、「現代世界が、戦争と環境危機によって自滅しつつある」と警鐘を鳴らし、「諸宗教は、各々(おのおの)の宗教が持つ深い伝統と叡智(えいち)という宝物から、平和が世界の命であると知っている。神の名を利用した戦争が、神に対する冒瀆(ぼうとく)であることも知っている」と示した。

次回大会は、ローマで開催予定となっている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)