人類に奉仕するために諸宗教間の調和を構築――教皇(海外通信・バチカン支局)

一つは、「物事を深く見極める」こと。典礼や実践といった、宗教の可視化できる部分は、伝統的遺産として擁護、尊重されなければならないが、その根底に流れる精神は、友愛通路が示すように、「あらゆる宗教の感受性に共通する根源は、唯一だ」と言明。それは、「神との出会いの追究、最も崇高な存在(神)が人間の心の中に植え付けた無限への渇望であり、私たちの人生という旅を活性化し、神と出会うため私たちに我を捨てさせ、最も大きな喜びと、死よりもさらに大きな生命の追究を促す」と語った。これは、「あらゆる違いを超えて、全ての人が神へと向かって歩む兄弟、巡礼者である」ことを示すと述べた。

二つ目の提言は、友愛通路の連結によってつくられた「絆を大切にしていく」ことだ。諸宗教対話とは「あらゆる方法で、教義的、実践的な共通点を探求すること」と考えがちだが、「実際には、諸宗教の教義や実践は異なるものであり、(前述のアプローチは)私たちを分裂させる」と指摘。「私たちを真の意味でつなぐのは、相違性の間に結び付きを見いだし、友愛、ケア、相互関係の絆を構築していく配慮」であると説いた。

それは、互いが心を開いて他者を受け入れ、相手の宗教的伝統から学び、共に真理を追究することに努め、人間的、霊的な必要性に応えていくことでもあると説明。この絆が、「人間の尊厳性の擁護、貧困との戦い、平和の構築」といった問題に対して、共に取り組み、一致して歩むことを可能にすると話した。

最後に、教皇は、「イスティクラル2024年度合同声明文」の精神に沿い、「人類の善のために、諸宗教間での調和を促進していこう」と参加者に呼びかけた。同声明文は、人類の未来を脅かす重大な問題、特に、宗教を利用して扇動する戦争や紛争、諸国民の発展と共存を阻害する環境危機に対し、「諸宗教に共通する価値観が促進・強化され、社会が暴力と無関心の文化に勝利し、和解と平和を構築していく」ことを目指している。教皇は、インドネシアが、「文化、民族、宗教伝統と生態系のモザイク(多様性)を持つ」と語り、「最も大事な宝物は、協調と相互尊敬による調和だ」と訴えて、スピーチを結んだ。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)