「多様性のうちにおける一致を求めて――教皇のインドネシア訪問」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
多様性のうちにおける一致を求めて――教皇のインドネシア訪問
インドネシアを訪問中のローマ教皇フランシスコは9月4日、同国大統領府で開かれた歓迎式典、ジョコ・ウィドド大統領との個別会談の後、政府、市民社会、同国付け外交団に対し、1945年に制定されたインドネシア憲法に言及しながら、同国の「諸民族で構成される多形態の現実」「多大なる生態系の現存」のうちにおける「一致」について話した。
1万7508の島で構成されるインドネシアには、360の民族が共存し、約2億7000万人が住む。六つの宗教宗派(イスラーム、仏教、カトリック、儒教、ヒンドゥー教、プロテスタント)が国家から公認され、200に及ぶ民族信仰も存在する。総人口の85%がイスラーム教徒(ムスリム)で、キリスト教徒は2400万人、このうちカトリック教徒は800万人に上る。教皇によるインドネシア訪問は、教皇パウロ六世(1970年)、教皇ヨハネ・パウロ二世(89年)に続く3回目だ。
スピーチの中で教皇は、同国の国家としての存在を可能にしている「多様性のうちにおける一致」について、「多様性の尊重による調和は、おのおのの持っているビジョンが共通の必要性に配慮して、おのおのの民族グループ、諸宗教が友愛の精神に沿って行動することで到達できる」と前置きし、「文化、イデオロギーに由来する異なるビジョンや動機という多様性の間で、この叡智(えいち)あるデリケートな均衡による一致は、不均衡から絶え間なく守られていかなければならない」と述べ、特に政治活動の場で重要と戒めた。
さらに、同国内でいまだ存在する「いくつかの地域にある不均衡と貧困」に言及し、カトリック教会は、「平和的で建設的な調和を促進する」「不均衡と貧困の克服のため、諸宗教対話を強化したいと願う」と公約した。
また、1945年に制定されたインドネシア憲法の前文が、「全能の神」「社会正義」について触れていると指摘。「多様性のうちにおける一致、社会正義、神の祝福」は、「特定の(政治)プログラムにインスピレーションと指標を与える」「(国家の)大黒柱」と示した。そして、同国建国の原則が、今回の訪問のモットーである「信仰、友愛、慈しみ」に合致することを強調した。
だが、世界の状況に目を向けると、普遍的友愛を阻止するいくつかの傾向が存在すると警告。各地で、「相互尊敬の欠如、自身の利益、自身の立場、自身の部分的な歴史的説話を、あらゆる方法で主張する不寛容な意思による暴力に満ちた紛争」が勃発し、「集団全体に対して終わりのない苦しみを生み、流血の戦争に陥っている」と述べた。
諸国家の内部でも、政権担当者が国民に画一的な政策を押し付け、個人やグループに判断を任すべき諸問題について、自身のビジョンを強要して激しい社会的緊張を生み出していることを例示。多くの地域で、「魅惑的な政治政策」を標榜(ひょうぼう)しつつも、「社会正義の構築に対する効果的、長期的展望に立った努力が欠如している」と語り、「人類の無視できない部分が、社会の底辺に追いやられている」「厳しい紛争状況を引き起こしている」と糾弾した。
また、神からの祝福が「人類と市民社会にとって余計なもの」「社会の促進は、人間の力で遂行されるべきだ」と信じる人々もいるが、「彼らは、往々にして、鬱憤(うっぷん)を抱え、失敗に陥る」と指摘。「神への信仰の重要性が絶え間なく主張」されながらも、しばしば権力者によって操作され、平和の構築、交わり、対話、尊敬、協調、友愛ではなく、「分裂を扇動し、憎悪を強化していく」ために神の祝福が利用されていると非難した。こうした状況にあっても、インドネシアの建国精神と憲法の主張する「叡智と均衡」に喜ぶことを呼びかけ、「平和は正義の結果である」と述べてスピーチを結んだ。