比叡山宗教サミット37周年「世界平和祈りの集い」
平和の祈りに先立ち、延暦寺会館で行われた「平和の式典」では、看護師で、国際NGOペシャワール会PMS支援室室長の藤田千代子氏が、『平和の力を信じ―中村先生の意志を継いで―』と題して講演した。
同会は、故中村哲医師のパキスタンでの医療活動のために1983年に結成された。89年からは隣国アフガニスタンでの医療支援も始めた。当時、現地は深刻な干ばつに見舞われ、農地が荒廃。食料不足が現地住民の栄養不足を招き、健康を保つ上で大きな課題となっていたことから、同会は、井戸掘りによる水源の確保、用水路や灌漑(かんがい)施設の建設、農地の復旧と開墾などの活動も続けている。
90年から看護師として現地に赴いた藤田氏は、ハンセン病の診察でのエピソードを紹介。ムスリマ(女性イスラーム教徒)は、家族以外の異性に肌を見せないよう、ブルカなどで全身を覆っており、皮膚に症状が現れるハンセン病の診察では、藤田氏が目視確認を担っていた。診察の合間、藤田氏が、全身を覆う衣服が皮膚の異常を発見する機会を奪い、ハンセン病の早期発見、早期治療を妨げていると嘆いた時、中村氏から「異文化を侮辱してはならん」と一喝され、日本で培われた“自分のものさし”で善悪や優劣を判断してはならないと諭されたと回顧。その姿から、自分を捨て、まず目の前で困っている人のために自分ができることを、という中村氏の信念を強く感じたと述べた。中村氏が診療活動に加え、自ら重機を操縦し、さまざまな建設作業にもあたる姿からも、そうした信念を感じたと強調。平和の実現に大切なことも同じで、平和を望む一人ひとりが、身の回りで自分ができることを考え、見つけ、実際に行動に移すことが大切と述べた。