「第41回庭野平和賞」を受賞したモハメド・アブニマー博士らが本会を訪問(動画あり)
「第41回庭野平和賞」を受賞した「平和と正義のためのサラーム研究所」創立者で所長のモハメド・アブニマー博士と、夫人のイルハム・ナサール博士が5月15日、立正佼成会本部(東京・杉並区)を訪問した。庭野平和賞委員会のフラミニア・ジョヴァネッリ委員長(NPO団体オ・ヴィヴェイロ・オンルス会長)、ムハンマド・シャフィーク氏(ナザレス大学諸宗教研究対話センター所長)、アルズー・アフメッド氏(ゲノミクス・イングランド倫理部門主査)、ムニブ・A・ユナン師(ヨルダン及び聖地福音ルーテル教会名誉監督)、ソンブーン・チュングプランプリー(ムー)師(仏教者国際連帯会議=INEB、タイ=事務局長)らが同行した。
一行は、大聖堂での「釈迦牟尼仏ご命日(布薩=ふさつ=の日)」式典に参列した。式典では、会員の体験説法に続き、公益財団法人庭野平和財団の庭野浩士理事長が登壇し、受賞者であるアブニマー博士を紹介。これまでの歩みや功績を披露した。
次いで、博士の友人として庭野光祥次代会長が登壇。光祥次代会長は、「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)の理事としてさまざまな諸宗教間対話の場に出席する中で、宗教や文化の違いを軽やかに超えていくアブニマー博士の姿勢に触れ、「自分が勝手に作っていた壁みたいなものがスーッとなくなっていった」と振り返った。その上で、「一瞬の出会いの中でもこちらの壁を取り去ってくださるアブニマーさんは、きっと、日頃の生き方そのものが平和であり、和解を求めて、人を癒やす、そんな方だと感じます」と博士の人柄を紹介した。
光祥次代会長の呼びかけで聖壇に立ったアブニマー博士は、参集した会員650人を前にあいさつを述べた。博士は、平和構築に向けた仏教とイスラームの共通理念として、「相互関係」「奉仕と善行」「連帯」「自由」の4点を挙げ、中でも「人間の連帯」が精神の目覚めにとって重要であると強調。「世界人権宣言」にも出てくる「人間の尊厳」に基づく連帯を、単にムスリム(イスラーム教徒)だけでなく全ての人との間に見いだしていきたいと訴えた。
また、人間は生まれながらにして自由であり、尊厳と権利において平等であるとの価値観は、全ての宗教に共通している教えであると主張。『法華三部経』の「無量義経」の一節と、イスラームの聖典「クルアーン」の一節を取り上げながら、「全ての人間は平等に生まれ、一定の権利を有する。人種、民族、宗教、性別、階級などを問わず、等しくこの尊厳は守られるべきもので、人々の連帯の基盤となるもの」であると語った。
一行は庭野日鑛会長の法話に耳を傾けた後、午後には、大聖ホールで行われた本会職員や会員、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会関係者との交流会に臨んだ。交流会には光祥次代会長、熊野隆規理事長も参加した。
交流会では参加者は、アブニマー博士とイルハム博士がこれまで紛争地域などの教育現場で行ってきた、「平和構築・和解のワークショップ」の一端を体験。初めにアブニマー博士が、「赦(ゆる)し」と「和解」の違いなどを解説した。続いて、イルハム博士をファシリテーターにグループワークが行われ、参加者は「公の場で誰かに自身の信仰を罵(ののし)られたら」「両親に家を出ていけと言われたら」など五つのシナリオに沿ってグループに分かれ、意見交換。全体共有では「赦すべき人が身近であるほど難しい」「赦すことは自分の心を知ることにつながる」「共感(共に怒ってもらう)が大事」などさまざまな声が上がった。
ワークショップのまとめの中でアブニマー博士は、全ての意見を讃歎(さんたん)した上で、「皆さんが挙げた条件付きの赦しの事例は、無条件の赦しに向けた大切なファーストステップです」と強調。「暴力の連鎖」というサークルを提示し、世界から争いがなくならないのは、「多くの人が連鎖から抜け出せずに今もサークルの中で生きているから」と説明し、連鎖から脱して平穏と愛を得るためにも「無条件の赦し」が大切であると語りかけた。
最後にあいさつに立った光祥次代会長は、人は一般的な概念として「赦し」を理解しているが、今回のように具体的な事例で一つ一つ問われると、「赦すべき」と思いながらも赦せていないことがたくさんあることを実感したと話した。また、KAICIIDでの自身の経験とワークショップでの体験を交え、人はその存在が脅かされそうに感じたときに恐れを抱き、その恐れが対立を生むのだと学んだと述べた。