福島の今を伝える 震災体験の「語り人」活動――昨年の「一食福島復興・被災者支援事業」から

青木氏(左から2人目)は、若い世代に語り人活動を引き継ぐことが今後の課題だと述べる

語り人が見つめる福島の将来

語る会に所属する「語り人」は約20人。「語り部」としないのは、昔話を伝承するだけでなく、一人ひとりが自分の思いを自身の声で伝えていくとの願いからだ。

「最初はしゃべるのが嫌でした。当時の記憶がよみがえると、涙で言葉が途切れてしまって」と振り返る小林留美子さん。かばん一つで避難し、思い出の詰まる自宅を離れたことが何よりもつらかった。それでも、自分の体験が誰かの役に立てばとの一心で伝承を続けている。「これまでの体験を書き留めて、自分がいなくなった後でも誰かに分けられるようにしたいです」。

遠藤久仁子さんは、小林さんと共に活動初期から語り人を務めてきた。3年前に富岡町に戻ってからは、住民との交流を通じ、直接顔を合わせてコミュニケーションを取る大切さを再確認した。「支援してくださった全国の皆さんの恩に報いるためにも、伝え方を勉強して語っていければ」と意気込む。

若手として活躍する宗像涼さんは、現在25歳。被災時は小学6年生だった。初めてツアーガイドを務めた際、参加者から「子ども目線の話を聞けてよかった」と声をかけられ、若い自分にこそ伝えられる思いがあると実感したという。「変化していく町の様子を伝えられるよう、常に勉強です」と笑顔を見せる。

コロナ禍以降は、オンライン口演の依頼が多く寄せられている

一食平和基金からの拠出金は、こうした伝承活動を積極的に発信していくため、団体ウェブサイトの刷新に活用された。語り人やガイドの依頼フォームが新設されたほか、活動記録、語り人紹介、物販のページも順次公開される予定だ。

青木氏は、「複合災害からの立ち直りは簡単ではありません。語り人活動を若い世代に引き継いでいけるよう、これからも見守って頂ければ幸いです。ご支援くださった佼成会の皆さまに感謝するとともに、福島に来られる時は、喜んでご案内できればと思います」とメッセージを寄せた。

語る会ウェブサイト https://www.tomioka311.com/