佼成出版社発刊の『風さわぐ北のまちから』(著者・遠藤みえ子)が、第72回小学館児童出版文化賞を受賞(動画あり)

東京・千代田区の如水会館で行われた贈呈式の席上、受賞の喜びを語る著者の遠藤氏

佼成出版社から昨年6月に発刊された、遠藤みえ子氏の中高生向け書籍『風さわぐ北のまちから 少女と家族の引き揚げ回想記』がこのたび、第72回小学館児童出版文化賞を受賞した。

当日の様子(クリックして動画再生)

同賞は、昭和27年に児童文化の振興に寄与するため創設された「小学館文学賞」「小学館絵画賞」から発展した賞で、対象を国内で創作された児童書籍全般に広げたもの。これまでに、井上洋介氏の『ぶんぶくちゃがま』(ミキハウス)や、梨木香歩氏の『西の魔女が死んだ』(楡出版)など数多くの有名作品が受賞してきた。

今年は、絵本作家や児童文学作家など5人の審査委員をはじめ、図書館や書店、一般読者らから推薦された優秀作品の中から13作品がノミネート。9月の最終選考会を経て、『風さわぐ北のまちから』のほか、住野よる氏の『恋とそれとあと全部』(文藝春秋)、みやこしあきこ氏の『ちいさなトガリネズミ』(偕成社)の3作品が選ばれた。

作家や出版関係者など多くの人が集った

11月9日には、東京・千代田区の如水会館2階スターホールで贈呈式が開かれた。受賞者や出版関係者が集って行われるのは4年ぶりのこと。当日は、小学館の相賀信宏社長のあいさつに続き、審査委員による選評が行われた。『風さわぐ北のまちから』を推薦した児童文学作家の富安陽子氏は、北朝鮮からの引き揚げ体験記というと、重く沈鬱(ちんうつ)な物語を思い描くが、同作品のすごいところは「温かい希望とユーモアに満ちている」と考察。困難な状況の中にあって、それでも優しくあろうとする人間の心が丁寧に描かれていると話し、「どんな時も人は人に優しくありたいと思わせてくれる作品」とたたえた。

相賀社長から賞状と花束が贈呈された後、3人の受賞者がそれぞれあいさつ。この中で、遠藤氏は、78年も前の出来事の回想記が受賞したことに、驚きと喜びでいっぱいだと話した。さらに、「世界では今も争いが続いています。いつ自分の身に火の粉が降りかかるか分からないからこそ、若い人たちには書物をたくさん読んで、平和観に基づいた考え方をしっかり確立してほしい」と呼びかけ、同作品が子どもたちの読書を後押しできればうれしいと語った。

『風さわぐ北のまちから 少女と家族の引き揚げ回想記』

第二次世界大戦終結後の激動の最中(さなか)にあった朝鮮半島北部の港町、鎮南浦(ちんなんぽ)に暮らす日本人一家が、苦難を乗り越え、日本へ引き揚げるまでを描いた奇跡の実話。

遠藤みえ子・著
石井勉・絵
佼成出版社
1760円(税込)

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