ロシア、ウクライナ両大統領の会見を目指すアル・ナヒヤーン大統領とローマ教皇(海外通信・バチカン支局)
11月30日から12月12日までアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで、国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の開催が予定されている。その機会に、ムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン大統領が、ローマ教皇フランシスコの同意を得て、ロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会見をアブダビで実現することを試みているとの報道がなされた。バイデン米大統領の了承と協力も得ており、敵対する両大統領の会見では、ウクライナ侵攻の「停戦」が目的にされるとのことだ。レバノンのフランス語紙「L’Orient-Le Jour」(OLJ)が、欧米とアラブ圏の外交筋から得た情報として掲載し、イタリアの複数メディアが関連ニュースを取り上げた。
アル・ナヒヤーン大統領は、2022年10月にモスクワ、23年6月にサンクトペテルブルクを訪問し、すでにプーチン大統領とウクライナ侵攻について会見したとのことだ。OLJは記事の中で、「教皇フランシスコがCOP28の機会に、UAEで世界諸宗教指導者による平和会議を企画している」とも報じた。
それを裏付けるように、教皇はこのほど、スペインの週刊誌「Vida Nueva」のインタビューに応じ、この中で「ワシントンを訪問した教皇特使のマテオ・ズッピ枢機卿が次に訪問する地は北京だ」と述べ、その理由として、米国と中国が「ウクライナ侵攻の緊張緩和に関する鍵を握っている」と示した。
こうしたバチカンのイニシアチブを「平和攻勢」と称する教皇は、COP28開催前の11月にアブダビで、「私たち(バチカンとUAE)は、諸宗教指導者による平和会議を企画している」とも公表した。バチカン国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿が、バチカン外の中立地で開催される平和会議を調整しており、全ての諸宗教指導者に呼びかけているという。
2019年2月、ローマ教皇として初めてUAEを訪問した教皇フランシスコは、イスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長と共に「人類の友愛に関する文書」に署名。キリスト教、イスラーム間の和解のみならず、世界の諸宗教対話の促進に大きく貢献した。両宗教指導者による合同署名文書の実現に向けて中心的な役割を果たしたのがアル・ナヒヤーン大統領だ。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)