世界に目を向けて自分ができることを WCRP日本委「和解の教育タスクフォース」セミナー

宗教者、一市民として何ができるのか――セミナーでは、「戦争から和解と平和のプロセス」についてスキルや思考について学んだ

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会「和解の教育タスクフォース」主催のセミナーが7月22、23の両日、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開講され、37人が参加した。

ロシア軍によるウクライナ侵攻から約1年半、いまだ戦争が終息に向かう兆しは見えず、犠牲者と難民・国内避難民は増加している。今回、同セミナーでは『戦争から和解と平和のプロセスへ ~私たちに何ができるのか~』をテーマに設定。ウクライナ侵攻の実情を踏まえ、世界中の紛争・戦争によって傷ついた尊い「いのち」について考えるとともに、平和と和解へのプロセスを学び、宗教者として何ができるのか考える機縁とすることを目的とした。

22日、清泉女子大学教授の松井ケティ氏(同タスクフォース運営委員)と石鎚山真言宗総本山極楽寺教学部長の村上泰教氏(同タスクフォースメンバー)が講師を務めた。

『戦争の文化から平和の文化へ 和解のプロセスとは?』と題して講義に立った松井氏は、際限ない軍備拡張は人々に不信を植えつけ対立を助長するだけで、戦争の抑止力になり得ないと主張。分断の起きている社会では、互いの違いを理解し他者を慈しむ「共生」社会の実現が急務と述べた。さらに平和実現のための手法として、共感を基にした「対話」の重要性を強調した。

この後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)モルドバ代表のフランチェスカ・ボネリ氏がオンラインでスピーチを行った。ボネリ氏は、ウクライナ侵攻後、欧州最貧国の一つとされるモルドバが人道的見地から積極的に難民を受け入れてきた実情を説明したほか、難民が同国内のみで使用できるクレジットカードの給付などモルドバ政府とUNHCRの協働で実現した支援策を紹介。ウクライナ難民の消費活動がモルドバの地域経済にも寄与する画期的な取り組みと説明した。また、WCRP/RfP国際委員会と立ち上げた「諸宗教指導者評議会」が人々の連帯と対話促進に貢献していると語った。

翌23日には、日本YMCA同盟の横山由利亜氏が『日本で暮らすウクライナ避難者の現状から』と題し解説した。ウクライナ出国から来日までの支援や、日本での生活をスタートするまでなど、状況に応じて難民への支援の在り方が異なる点を指摘し、「ウクライナの人々が日本での生活に希望を持てるようなサポートが何より重要」と述べた。さらに、避難生活が長引くにつれて孤立感を深め、精神的不調に陥る人も少なくないと説明し、周囲の人々はあいさつなど日頃の触れ合いを心がけてほしいと訴えた。

松井氏によるまとめの講義が行われた後、班ごとに「私たちに何ができるのか」を模造紙に書き出して発表した。参加した女性(22)は、「これまで、どこか人ごとと受けとめていたウクライナ侵攻を身近に感じることができました。今後は世界が抱える諸問題に意識を向け、自分の意見をSNSを通じて発信したい」と感想を語った。