台湾の「ヒューマニスティック仏教連合会」がバチカンを訪問(海外通信・本紙バチカン支局)
台湾の「ヒューマニスティック仏教連合会」の使節団が3月16日、バチカンでローマ教皇フランシスコに謁見(えっけん)した。同使節団は台湾の僧侶とカトリック教会のメンバー約100人で構成され、諸宗教対話と教育を目的にカトリック教会の聖域巡礼などを行うためバチカンとローマを訪問していた。
台湾からの使節団に対して教皇は、今年2月5日に95歳で死去した台湾の佛光山創設者・星雲大師(釈星雲氏)の業績に言及。星雲大師は「ヒューマニスティック仏教への貢献者、諸宗教対話の推進者」だと述べ、哀悼の意を捧げた。
続いて、台湾の使節団が「教育目的の巡礼」と「出会いの文化の発展」を求めて活動していることに触れ、自らの中に他者を受け入れる門戸を開くことは難しいが、その努力は「他者のうちに友人、兄弟姉妹を見いだす」ことにつながり、それは「われわれ自身についてより深く知ることでもある」と強調した。他者との相違性を見いだし、受け入れることで「われわれが自身の殻から出ていくように誘(いざな)われ、互いの違いを認め、抱擁できるようになる」からだ。
さらに、「出会いの文化」が、「橋を構築し、他者にインスピレーションを与える聖なる価値観に対して(自身の)窓を開放するようになる」と述べ、出会いの文化は、多くの人々を分断する先入観、偏見、無関心の壁を打ち破っていくと主張した。
また、「一宗教の聖域を訪問する巡礼」は、その宗教独自の神聖へのアプローチに対する評価を強めると指摘。バチカンとローマに関して言うならば、「神であるキリスト自身が、私たち人類家族に対する愛のために、この世の巡礼者になられたことを理解することになる」と説明した。
教皇は、歴史の中で諸宗教の信仰者たちが、「出会いのオアシス(憩いの場)としての時間、空間を創設してきた」ことを重要視しており、その時間が現代社会では特に重要になっていると強調した。なぜなら、「人類、地球の加速度的な変化は生活と労働のリズムの激化と重なり」「その変化が宗教生活にも影響を与えてきた」からだ。
こうした状況に対処するには、時を超えた真理に向けて、「祈りや平和構築といった過去に確立されてきた方法で、青年たちを育成、教育していくことが必要」と主張。宗教伝統が有する「叡智(えいち)と人間性」を基盤とし、世界に「普遍的友愛を滋養していく教育活動を刷新する刺激となっていこう」と呼びかけた。
最後に、教皇は「この教育巡礼が、あなたたちの霊的な師である釈尊の思いに導かれ、あなたたち自身、他者、キリスト教伝統、私たちの『共通の家』である地球とのより深い出会いとなるように」と願い、スピーチを結んだ。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)