本会一食平和基金が令和3年度運営報告を発表 国内外の各事業に総額1億8924万円を拠出

JVCとの合同による「教育・人材育成」の事業では、貧困に苦しむ南アフリカの子供たちに、ケアセンターの菜園で収穫された食材を使用した給食を提供した(©JVC)

立正佼成会一食(いちじき)平和基金の令和3年度運営報告が先頃、同基金運営委員会から発表された。昨年度の総額は1億8924万2797円。同運営委による中期運営方針(2018年~23年)に沿って重点を置いた「貧困(飢餓)の解消」「教育・人材育成」をはじめとする九つの分野に活用された。

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「貧困(飢餓)の解消」「教育・人材育成」などの各分野に活用

一食平和基金は、困難に直面する世界の人々に思いを馳(は)せ、平和を祈りながら、会員が月に数回の食事を抜いた食費分を献じる「一食を捧げる運動」(一食運動)の浄財で運営されている。

支援先は、全ての生きとし生けるものが大いなる一つのいのちに生かされた尊い存在であるという「一乗」の教えに基づき、共生の世界の実現を目指すさまざまな分野に広がっている。昨年度も、本会が企画から実施まで独自に展開する「自主プロジェクト」や、国連機関やNGOなど外部団体と共同して行う「合同プロジェクト」の各事業を支援。紛争や貧困、自然災害などの影響を受ける人々への緊急対応に従事するパートナー団体にも資金を拠出した。

バングラデシュへは多くのロヒンギャ難民が避難している。難民キャンプを暴風雨など自然災害の危険から守る緊急対応として、モンスーン対策キットが国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から配布され、難民自らの手でシェルターの補強が行われている(©UNHCR/Roger Amold)

ユニセフや国連世界食糧計画(国連WFP)などの国連機関が昨年、共同制作した報告書によると、十分な食料がなく栄養不良に陥る世界の飢餓人口は約8億1100万人に上ったという。これは世界人口の10人に1人の割合に相当する。

このような状況を受け、重点分野である「貧困(飢餓)の解消」では、国連が定める「持続可能な開発目標」(SDGs)の達成を目指す取り組みへの支援として、「アフリカへ毛布をおくる運動」、国連WFPの「ミャンマーにおける学校給食プログラム」に計886万1113円を拠出した。この中で、「ミャンマーにおける学校給食プログラム」では、軍事政権が支配する同国の貧困地域の子供に学校給食や栄養強化ビスケットを提供。政府の運営能力向上のためのトレーニングも行いながら、子供の就学率の向上と発育の促進に寄与した。

国連WFPは、就学率の向上と発育の促進を目指して、ミャンマーの子供に学校給食を届けた(©WFP)

また、こうした貧困を根本的に解消し、誰もが安心して暮らせる社会を実現するには、教育を通じて相手の文化や習慣、宗教の違いを理解し、信頼関係を醸成できる人づくりが不可欠との観点から「教育・人材育成」も重点分野に決定。昨年度は「親子で取り組むゆめポッケ」や「カンボジア仏教研究復興支援事業」など九つの事業に計4292万5196円を拠出した。

このうち、日本国際ボランティアセンター(JVC)の「南アフリカ青少年支援事業」では、貧困層が人口の6割を占める同国の中でも、親の出稼ぎや失業で生活が困難な北東地域の家庭の子供を対象とした給食の提供や菜園作りのほか、心的ケアを行うボランティアの育成を実施。持続的なサポートを可能にする社会を目指した活動が展開された。

さらに、「緊急救援・復興支援」では、新型コロナウイルス感染症の流行への対応をはじめ、一昨年11月のエチオピア政府軍と反政府勢力との軍事衝突、昨年2月のミャンマーでの軍事クーデター、同5月のイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への空爆など、計8件の天災や人災に対する緊急の人道支援を行った。また、「一食福島復興・被災者支援事業」を実施し、東日本大震災の復興支援に従事する7団体に助成するなど、これらの分野に計6603万9017円を拠出した。

紛争で親を亡くしたアフガニスタンの子供に、食料費の支給や平和教育、精神的サポートを緊急で実施した(©平和村ユナイテッド)

「保健・医療・福祉」では、生活に困窮する韓国残留日本人女性の保護を行う「ナザレ園」(韓国・慶州市)を支援。ほかにも、「一食地域貢献プロジェクト」では本会の62教会が、地域で社会福祉に関する活動に取り組む125団体に浄財を届けた。また、一食運動の推進の一環として、会員や運動の趣旨に賛同する未会員が気軽に参加できるよう、スマートフォン決済サービス「J-Coin Pay」を使ったオンライン献金システムを導入した。

◇「一食を捧げる運動」ウェブサイト https://ichijiki.org/