「教皇とキリル総主教の会見が延期」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
教皇とキリル総主教の会見が延期
ローマ教皇フランシスコはこのほど、アルゼンチンのメディアからのインタビューに応じ、「6月にエルサレムで(キリル総主教と共に)企画していた会見を、バチカン(外交)が延期せざるを得なくなり、残念に思う」と明かした。教皇は同月にレバノンを訪問した時、隣国イスラエルにある聖都エルサレムで、ロシア正教会の最高指導者であるキリル総主教と2回目の会見を果たすと報道されていた。
さらに、教皇は、「バチカン外交が、この時期の私たちの会見を、多くの混乱を招く原因になると判断した」と延期の理由を説明。だが、教皇自身としては、「私は、常に諸宗教対話の促進に努めてきた。ブエノスアイレスで大司教を務めていた時も、キリスト教徒、ユダヤ教徒、ムスリム(イスラーム教徒)たちと共に、実りある出会いの場をつくってきた。それらは、私が誇りに思っている取り組みだ。同じ政策を、バチカンでも推進している。私が何度も強調してきたように、合意は紛争に勝るからだ」との考えを示し、キリル総主教との面会が実現しないことを惜しんだ。
教皇はこれまで、ロシアやプーチン大統領の名前を出さないが、厳しい表現を使ってロシア軍によるウクライナ侵攻を糾弾してきた。宗教的動機を与えて侵攻を支持するキリル総主教に対しても同じく、バチカン外交は、現時点での両指導者の出会いが外交上の誤解を招き、道具化される可能性を持つと判断したのだ。
ウクライナのカトリック教会や同国政府は、「教皇がウクライナを訪問すれば戦争はなくなる」と主張し、その実現を強く望んでいる。これに対し教皇は、「戦争の終結や停戦、人道回廊の開設などといった高い目標を危険に陥れるようなことを私はできない。訪問の翌日に、再び戦争が始まるような状況の中でウクライナを訪れることが、何の役に立つのか」との疑問を示した。
ユリウス暦を用いる正教会は4月24日、キリストの復活を祝った。教皇は正教会の復活祭に際して、キリル総主教宛てにメッセージを送付。全ての人が「聖霊の助けによって、正義、平和、喜びの王国に入ることができるように」と願い、私たちの説く福音のメッセージに信ぴょう性を与えることができるよう共に祈り合いましょう、と呼びかけた。
さらに、「聖霊が私たちの心を改め、私たちを真の平和の推進者としてくださいますように」と祈り、特に、「戦争で引き裂かれたウクライナにとって、キリストの死から新しい生命への大脱出が一日も早く現実となり、ウクライナの人々が切望する戦争という暗黒に終止符が打たれ、新しい黎明(れいめい)を見ることができますように」との願いを表明した。