職員人権啓発講座 『インターネットと部落差別』テーマに

「反差別・人権研究所みえ」の松村事務局長が講演した

『インターネットと部落差別~差別を支えない一人になるために~』をテーマに、立正佼成会の今年次の職員人権啓発講座(第27回、主管・本会人権啓発委員会)が11月2日、オンラインで行われ、教団、事業体の職員約350人が参加した。当日は、公益財団法人反差別・人権研究所みえ(ヒューリアみえ)の常務理事で事務局長の松村元樹氏が講演した。

松村氏は冒頭、SNSや電子掲示板の特性として、同じ趣味や関心事、価値観の人が集うことで共感が得られやすい環境が生まれると解説。そのため、デマや誹謗(ひぼう)中傷、差別的な意見であっても正しいことのように受け取られやすく、誤った理解や情報の拡散を助長する危険性をはらんでいると指摘した。そうしたネット空間は、同じ考えを持った人が集まるため、閉鎖的になりがちで、異なる意見に触れることがなく、一度他者への攻撃が始まると歯止めがかからなくなり、社会の分断を生む要因になると警鐘を鳴らした。

また、被差別部落の地名リストをウェブサイトに掲載した出版社に対し、今年9月、東京地裁が該当部分の削除と賠償金の支払いを命じた事件について詳述。インターネット上に掲載された情報は削除の手続きが複雑で時間がかかり、その間に情報が拡散して複製され、半永久的に残り続けて深刻な人権侵害を起こすと説明した。

近年は、動画共有サイトなどに差別的な動画をアップロードして広告収入を得るような悪質な事例も見られるとし、サービスの利用規約に差別行為の禁止を明記するなどの具体的な対応が一層求められると語った。

その上で松村氏は、差別は社会の多数派が少数派を攻撃して起こるとし、出身地や国籍、性自認や性指向の違いや、心身の障害への無理解が、その要因であると説明。インターネットでの差別を含め、それを見過ごすことは、差別を容認、黙認していることになると述べ、参加者に対して、少数派に行われている差別の実態を理解し、「差別を支えない」という毅然(きぜん)とした態度を取るよう要望した。