『宗教者が担う社会活動――宗教教誨師、チャプレン、臨床宗教師の現場から』 日宗連がセミナー
日本宗教連盟(日宗連)による第5回宗教文化セミナーが3月13日、東京・中央区の聖路加国際大学聖ルカ礼拝堂で行われた。テーマは『宗教者が担う社会活動――宗教教誨師(きょうかいし)、チャプレン、臨床宗教師の現場から』。日宗連に協賛する5団体(教派神道連合会、日本キリスト教連合会、全日本仏教会、神社本庁、新日本宗教団体連合会)の関係者、市民など77人が参加した。
当日は、府中刑務所の教誨師である猿渡昌盛・大國魂神社宮司が講演した。教誨師とは、刑務所などの矯正施設で、受刑者の育成や精神的救済を行う宗教者。神職にある猿渡師は、受刑者自身の罪や過ちを祓(はら)い清めることを目的に刑務所内で実施されている大祓いや、受刑者が親族の訃報に接した時に行われる遥拝式(ようはいしき)を紹介した。
次に、聖路加国際大学キリスト教センター主任チャプレンとして、終末期の患者やその家族のスピリチュアルケアを行うケビン・シーバー師が登壇。患者との日々の関わりに触れ、自らの病や死を受容できずに苦しみを抱えて、神への怒りをぶつける患者と神をつなぐ仲介者として、一人ひとりの怒りを受けとめ、痛みに寄り添うことを心掛けてきた体験などを発表した。
最後に、東北大学大学院文学研究科の鈴木岩弓教授が講演し、臨床宗教師の活動について紹介した。臨床宗教師とは、布教を目的とせず、被災地や医療機関、福祉施設といった公共空間で心のケアを行う宗教者のことで、近年、メディアで取り上げられるようになり、行政と連携して事業が行われるなど、活動の幅が広がっていると説明。日本は超高齢化による「多死」社会を迎えようとする中、国民の医療や介護の需要が高まるため、それらを地域で支え合う仕組みとして政府が掲げている「地域包括ケアシステム」で、臨床宗教師には大きな役割があると話した。
この後、講演者3人の対談が行われ、日宗連幹事の宍野史生師(神道扶桑教管長)がコーディネーターを務めた。この中で、臨床宗教師やチャプレンが、さまざまな考えや信仰を持って人々に触れ合う際、「『自分の信仰の教義』と臨床宗教師として守るべきルールの間でジレンマはありますか」と質問が会場の参加者から出され、それぞれが応答。鈴木氏は、「自身の信仰は捨てなければならないのか」と臨床宗教師の研修生に尋ねられたことを例に出し、自己の信仰を芯として持つからこそ、他者の考えや信仰を尊重して寄り添うことができると回答したことを紹介した。鈴木氏の「自身の信仰は捨てなければならないのか」という話に対してシーバー師は、自分の信仰だけが正しいと思わず、相手に理解される触れ合いを心がけていると強調した。一方、猿渡師は、日本では江戸時代まで神仏習合であったため、さまざまな宗教を受け入れていくことに問題を感じていないと語った。