聖フランシスコ修道院（イタリア・アッシジ）は９月５日、ローマ教皇フランシスコが１０月３日に同修道院にある聖フランシスコの墓前でミサを執り行い、終了後に新たな回勅「すべての兄弟たち」に署名すると公表した。現教皇が同国内を訪問するのは、新型コロナウイルスの感染が拡大してから初めてのこと。ミサは、信徒が参加しないかたちで行われる。

回勅は、教皇が公布する最高権威教書。現教皇はこれまで、教皇ベネディクト十六世（現名誉教皇）と共筆した『ルーメン・フィデイ』（信仰の光、２０１３年）、環境問題について提言した『ラウダート・シ』（神が賛美されますように、２０１５年）を出しており、新回勅は３番目となる。

新回勅には、「友愛と社会的友情に関して」という副題が付けられている。昨年２月に現教皇とイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」（エジプト・カイロ）のアハメド・タイエブ総長が署名した「人類の友愛に関する文書」に記されている「友愛」や「連帯」の精神を、同ウイルス禍収束後の世界の基盤にしていくことが内容といわれる。

現教皇は８月１９日、バチカン宮殿の教皇専用書斎で行われ、各国に中継された一般謁見（えっけん）で、「貧しい人々や、より弱き人々にとって不正義が続く世界において、新型コロナウイルスが第２波として再び猛威を振るうのなら、私たちはこの世界を変えていかなければならない」と述べた。さらに、アッシジの聖フランシスコが自然の全てを「兄弟姉妹」と呼んでいたことから、新たな回勅は同ウイルス禍収束後の新しい世界で、改革の原動力として「友愛」を唱え、人間と（神による）被造界（自然）との間に“和解”がもたらされるよう訴えると推測される。

また世界のキリスト教諸教会は、９月１日を「被造物を大切にする世界祈願日」と定め、１０月初旬まで世界中でさまざまな活動を展開している。
（宮平宏・本紙バチカン支局長）