WCRP/RfP日本委が新春学習会 アッザ・カラム国際委次期事務総長がスピーチ

「2020年新春学習会」では、世界の現状を踏まえ、宗教者の役割を確認した

世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会の「2020年新春学習会」が1月28日、立正佼成会の法輪閣(東京・杉並区)で催された。テーマは『WCRP国際委員会次期事務総長のアッザ・カラム教授との対話――第10回世界大会と新たな宗教者の役割』。同日本委の宗教者をはじめ、加盟教団の信徒ら約300人が参加した。

WCRP/RfPは昨年8月、『Caring for Our Common Future―Advancing Shared Well-being(慈しみの実践:共通の未来のために――つながりあういのち)』をテーマに、ドイツ・リンダウで第10回世界大会を開催した。紛争や気候変動といった世界の諸課題の解決に向けて討議を重ね、最終日には諸宗教者が共通して取り組む内容を盛り込んだ「大会宣言文」(リンダウ宣言)を採択した。また、大会では、ムスリム(イスラーム教徒)で、国連の要職を務めるエジプト出身のアッザ・カラム教授が新事務総長に選出された。

今回の学習会は、事務総長に就任予定のカラム氏を招き、「大会宣言文」の実現に向けた宗教者の役割と取り組みを共有するために実施された。

アッザ・カラム氏

当日、スピーチに立ったカラム氏は、国連憲章や世界人権宣言には、全ての人の権利の尊重と平等が謳(うた)われており、政治や経済、社会的に大きな課題を抱える現代において、思想や良心、信教の自由を守るためには、宗教協力による取り組みが重要と明示。諸宗教には他者への愛や慈悲といった共通の価値観があり、地球規模の課題の解決に向け、WCRP/RfPは「重要な役割を果たしていかなければならない」と述べた。

さらに、ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領やインド出身のノーベル経済学賞受賞者であるアマルティア・セン博士などの思想を引用し、自由とは暴力がなく、教育や医療、雇用が安定し、尊厳のある暮らしが持続的に保障されている状態と説明。世界や社会の自由は、人々からもたらされる慈悲によって保たれると説き、宗教者の慈悲の実践が重要になると語った。

その上で、神聖なものから受ける愛によって自身の信仰、平和、神への忠誠は生まれていると話し、人々の権利や自由が尊重される社会を目指し、「聖なるものに帰依していく」大切さを訴えた。

続いて、カラム氏、植松誠WCRP/RfP日本委理事長による対話が行われ、同国際委の杉野恭一事務総長代行がコーディネーターを務めた。この中で、植松理事長は自らが参加した第10回世界大会の印象や成果に触れながら、カラム氏のスピーチに言及。「カラム氏はこれまで国連で熱心に働かれたが、その根本には信仰がある」と強調し、信仰によって生まれる慈悲や愛が、表現や良心の自由といった人々の権利を尊重していくことにつながるとするカラム氏の考えに、「とても励まされた」と語った。

この後、参加者との質疑応答が行われ、政府と市民社会の協働のあり方や、今後の諸宗教間対話の取り組みなどについて意見が交わされた。

【カラム氏のプロフィル】
エジプト出身のイスラーム教徒。オランダ国籍も有する。アムステルダム自由大学で宗教と開発を指導。WCRP/RfP国際委員会を経て国連に入職し、国連人口基金(UNFPA)の文化担当シニアアドバイザーを務める。国連宗教・開発タスクフォースのコーディネーター兼議長として、世界600以上の宗教組織で構成する「人口と開発のためのグローバルインターフェイスネットワーク」と協力関係を構築。昨年のWCRP/RfPの第10回世界大会で、事務総長に選出された。米国滞在の手続き完了後、就任する。