2019年度「一食福島復興・被災者支援」 震災から9年を迎える被災地に 10団体 計850万円を拠出

このうち、「フクシマの声を全国に、世界に届ける」実行委員会は、被災者に対する偏見をなくし、人権を尊重する社会を目指して、被災地写真の展示や映像作品の紹介、ジャーナリストや被災当事者による講演会などを開催している。昨年10月14日には、神奈川・川崎市の多摩区役所ロビーで、地元団体と共催の写真展「叫びと囁(ささや)き フクシマ~尊厳の記録と記憶」を開いた。当日は、市民を前にフォトジャーナリストの豊田直巳氏が展示されている自身の写真を説明。震災直後から8年間、被災地に通う中で見聞した人々の様子や現地の状況についても紹介した。参加した小学校高学年の女子児童は、「原発事故の恐ろしさがよく分かった」と話した。

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豊田氏は、「原子力緊急事態宣言は今も継続中です。福島で生きる人や故郷に戻れない人の思いを写真で伝え、震災の記憶を風化させない活動を続けたい」と語った。同委員会事務局の茂野俊哉氏は、「豊田さんの写真展は一昨年から全国で開催し、台湾や韓国でも行いました。今後は、福島県内のアマチュア写真家の写真展や被災者による講演会、ワークショップにも力を注ぎたい」と述べた。

また、福島県産作物の地産地消の仕組みづくりや農業の担い手の育成、農作物の購入支援などを目的に設立された一般社団法人GDM(グッデイマーケット)ふくしまは、週に1回、JR福島駅前の広場で農家や加工業者が生産物を直接販売する市場を開いている。さらに、避難指示が解除された地域の住民にも商品を提供しようと、2018年5月、スーパーマーケットがなかった浪江町で移動販売車による野菜などの販売を開始した。

その後、同町に商業施設がつくられたことで販売地を原子力発電所がある大熊町に変更。同団体代表理事の佐藤宏美氏が販売車を運転し、週に1~2回、現地に赴いている。昨年11月28日には、同町大川原地区の復興公営住宅の敷地内にある広場で、福島市内の農家が栽培した大根やパプリカ、菊芋などの野菜や果物、ジャム、ジュースなど10品目以上を販売した。

福島県で地産地消の農業を進めるために設立された「GDMふくしま」。昨年11月28日、大熊町で移動販売を行った

購入した60代の女性は「佐藤さんや近所の方との会話が楽しみで来ています」と話す。佐藤氏は、「皆さんが移動販売を頼りにしてくれています。生活の支えになれるよう、今後も活動していきたい」と語った。