“ヒバクシャ”の記憶を継承せよ――ローマ教皇フランシスコの平和メッセージ(海外通信・バチカン支局)
カトリック教会は毎年1月1日を「世界平和祈願日」(日本では「世界平和の日」)とし、世界各地で祈りが捧げられる。バチカン記者室は12月12日、2020年の「世界平和祈願日」に向け、『希望の道程としての平和――対話、和解、環境改心』をテーマとするローマ教皇フランシスコのメッセージを公表した。
教皇はメッセージの中で、「あらゆる戦争は、人類家族の使命である友愛のプロジェクトを破壊する、兄弟の殺し合いである」と訴えた。その上で、「恐怖と疑心のメンタリティーを基盤とする虚偽の安全保障」として核抑止論を非難しながら、「ヒバクシャ」の存在に言及した。「広島と長崎に投下された原爆の中を生き残った人々は、1945年に発生した恐るべき出来事と、現在まで続く筆舌に尽くし難い苦を証明し続けてきた」と強調した。そして、「私たちは、次世代の人々が過去に起こった原爆投下の記憶を失うことを許してはならない。なぜなら、その記憶が正しく伝わることで、友愛に満ちた未来の構築が保障され、推進されるからだ」と伝えた。
なお、この教皇のメッセージは、『平和――障害と試練を前にしての希望の歩み』『平和――記憶、連帯、友愛を基盤とする傾聴の歩み』『平和――友愛の交わりにおける和解の歩み』『平和――環境改心の歩み』『結果は希望の強さに比例する』と題する5章から構成された。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)