横浜普門館で「IPCR国際セミナー」開催 日韓の宗教者、学者らが参加

日韓両国の宗教者や識者らは、東北アジア地域が抱える課題を共有し、平和共同体構築に向け討議を重ねた

『東北アジア平和共同体構築のための課題』を総合テーマにした韓国宗教平和国際事業団(IPCR)の国際セミナーが10月25、26の両日、立正佼成会の横浜普門館で開催され、日本と韓国の宗教者や学者など65人が参加した。本会から世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会会長の庭野日鑛会長、同理事の庭野光祥次代会長が出席。庭野会長が開会セッションで挨拶を述べた。

同セミナーは、日本、韓国、中国3カ国の宗教者や学者らが集い、東北アジア平和共同体構築に向けた課題について討議するもの。2009年から毎年開催されている。今年は諸般の事情により中国のメンバーは不参加となった。

冒頭、庭野会長が開会挨拶。庭野会長は、韓国参加団に歓迎の意を表した後、WCRP/RfP日本委員会による韓国、中国の宗教指導者との交流に触れ、同セミナーの目的である東北アジア平和共同体構築の実現には日中韓3カ国間の信頼醸成が欠かせないとの認識を示した。

庭野会長は開会挨拶の中で、宗教者として慈しみ、思いやりの心を根底に対話を重ねていく大切さを強調した

また、現在、日韓関係が政治的に大変困難な状況にあるとした上で、対話は人間だけに与えられた崇高な行為であり、対話を通して自らを省み、互いに高め合い、共通の価値観を見いだせると強調。「私たちは宗教者です。相手を慈しみ思いやる心、つまり愛や慈悲の精神を根底にして対話を重ねていくことが何より大切」と述べた。

さらに、WCRP/RfPの第10回世界大会の宣言文にある「根源でつながりあっているがゆえに、我々の幸福は本質的に共有されている。他者を助けることは、自分自身を助けることであり、他者を傷つけることは、自分自身を傷つけることを意味する」との一節を紹介。仏教でも、この世に存在する全てのものは互いに関連し合い、依存し合っている大いなる一つのいのちと教えていると説明した上で、「この真理に目覚めれば自他の区別はなくなり、他の悲しみ苦しみは自分のものとなる。このような本質的、かつ大きな見方をしていかない限り、世界に調和、平和を築くことはできない」と述べ、3カ国の宗教界全体の絆を強めるため共に力を尽くす意向を示した。

続いて、韓国側からキム・ヒジュン韓国宗教人平和会議(KCRP)代表会長(韓国カトリック司教協議会会長)が挨拶。同セミナーの10年間の歩みを振り返った後、昨今、東北アジアで国や民族間の対立が先鋭化していると指摘し、「平和は国や民族、思想、理念の壁を超えた人類の普遍的な価値であり、宗教者が共に手を携えて行動することで、平和への橋を渡すことができる」と述べた。

この後、上智大学の中野晃一教授が基調発題に立ち、政治学の立場から日韓関係について考察した。中野教授は、両国間で従軍慰安婦や徴用工などの問題が時を経るごとに大きくなっている背景には、戦後の総括として日本が結んだサンフランシスコ講和条約や日韓基本条約にこれらの問題の具体的な解決が盛り込まれていなかったことや、日本と韓国の政治姿勢や意向に大きな違いがある点などを挙げた。

また、世界的にもナショナリズムの風潮が高まり、移民排斥や人種差別といった「分断」の時代に入っていると指摘し、「『憎悪によって相手を蹴落とすのが人間の本質』との言説が本音を語っていると思われる現実の中で、『愛や慈悲によって分断を乗り越えることが人間の本性にかなっている』と説得力を持って語るのは本当に難しい課題。しかし、人間が人間らしく生きられる平和な世の中をつくるためにも、連帯や博愛の精神が大事であると訴えなければ、本当の意味で人間は自由を取り返すことはできない」と述べた。

この後、『葛藤を超えて和解へ』をテーマにセッションⅠ、『日本の移民政策と多文化共生社会の可能性――宗教者の視点から』をテーマにセッションⅡ、『宗教青年のエコの意識と実践』をテーマに青年セッションが開かれ、両国の宗教者、識者による発表に続き、ディスカッションが行われた。