WCRP/RfPの第10回世界大会 バチカンでも大きく報道
8月20日から23日まで、ドイツ・リンダウで開催された世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)の第10回世界大会は、バチカンのメディアでも大きく報道された。本紙バチカン支局から、その主なものを紹介する。
8月22日付のバチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」は、『人類一家族』という見出しを付け、WCRP/RfPの歴史、現在の構成、今大会の規模を説明しながら、世界大会の開会式を報道した。宗教の役割、世界の現状、WCRP/RfPの存在の意義に焦点を当てた内容だ。
この中で同紙は、ドイツのシュタインマイヤー大統領の開会の挨拶を引用。「宗教は戦争を正当化するものであってはなりません。平和を実現するためのものであり、そうでなくてはならないのです」と、宗教が「平和の道具」であるべきとの大統領のメッセージを紹介した。また、カトリック教徒としてナイジェリア・アブジャ大司教のジョン・オナイエケン枢機卿(WCRP/RfP国際共同議長)の挨拶を取り上げ、「今日、国家の偉大さが、他者を搾取する経済的支配や軍事力によって評価されている」との言葉を報じた。
さらに、基調発題者の一人として登壇した東方正教会コンスタンティノープル・エキュメニカル総主教のバルトロメオ一世のスピーチに『人類一家族――社会正義や創造(環境)の保全といった世界的課題に分裂して対処することはできない』との見出しを付け、ほぼ全文を掲載した。
同総主教は、自らが環境の保全、平和と和解の促進、諸文化・諸宗教間対話、人間の尊厳、聖なるものへの人間意識の覚醒などに努めてきたことを表明した上で、これらの点について「WCRP/RfPの国際活動が決定的な役割を果たす」との確信を示した。その理由として、WCRP/RfPが「信仰者たちが一堂に会し、共通善(公共の利益)の中でも、人類の脅威になっている環境破壊への対応を表明する唯一の機会である」からだという。そして、「1970年に創設されたWCRP/RfPが実現した最大の成果は、信仰を基盤とするこの機関が、政治家、市民社会、各分野の識者、神学者たちの豊かな知見に基づく誠実な対話を奨励したことにある」とし、今後も各分野、諸宗教間の対話・協力の「中核」であるとの期待を寄せている。
一方、今年3月にニュージーランドでモスク(イスラーム礼拝所)、4月にはスリランカでキリスト教の教会を標的にした爆破事件が起こるなど聖地への暴力が続いているが、8月24日付同紙は、世界大会において全世界の諸宗教の代表がモスクやシナゴーグ(ユダヤ教の礼拝所)、寺院などの保護のために協調していくことが示され、「聖地を守るプロジェクト」が動き始めたと報道した。
記事では、ウィリアム・ベンドレイ事務総長の言葉を引用。「一つの宗教の聖地に対する攻撃は、あらゆる(宗教の)聖地に対する攻撃であると考える時が来た。個々の共同体は、自身の礼拝の場を保護するのみならず、他の信仰の聖地も保護しなければならない」と紹介した。さらに、「諸宗教は、聖地の保護に関する重要な役割を果たすが、それは政府、自治体、社会からの支援があってこそ実現できる」とし、「現在、(WCRP/RfPに)聖地の保護に関する具体的なプロジェクトは導入されていないが、各国政府や国連との折衝は始まっている」との発言を伝えている。27日付同紙では、世界大会で朝鮮半島の両国、バングラデシュとミャンマー、中央アフリカ、南スーダン、コンゴ(旧ザイール)、アマゾンの森林に関わる国の宗教者が会合を持ち、協議したことが報じられた。
このほか、ラテンアメリカ司教会議(CELAM)の通信社「PRENSA CELAM」は23日、ラテンアメリカの諸宗教評議会の新たな人事を伝え、今後の活動に期待を寄せた。また、『平和推進者としての中東・北アフリカ地域の女性による対話』と題して行われた特別セッションを取り上げ、『世界大会は、平和構築者としての女性に焦点を当てた』との見出しで記事を掲載。24日付では、世界大会でアマゾンの森林保全のために平和の祈りが捧げられ、これに関して諸宗教者の連帯が示されたことを報じた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)