グテーレス国連事務総長のアズハル訪問(海外通信・バチカン支局)

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は4月2日、エジプト・カイロにあるイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」を訪問し、アハメド・タイエブ総長と懇談した。エジプトのニュースサイト「アフラム・オンライン」が同日に伝えた。

3月15日にニュージーランド・クライストチャーチにある2カ所のモスク(イスラーム礼拝所)でテロ事件が起きてから2週間余であることから、グテーレス事務総長は懇談後、「世界のイスラーム教徒たちに対する連帯を表明し、(排外主義的な言動で差別をあおる)ヘイトスピーチ、人種差別、反ユダヤ主義を非難する」と表明。「このような困難で、分断が危惧される時に、われわれは共に立ち、互いに擁護し合わなければならない」と呼び掛け、「どんな理由によってもテロは正当化されるものではなく、特に、宗教の名によって実行されるテロは憎むべきもの」と述べた。

また、「われわれは、人間の尊厳性と普遍的人権を支持し、促進していかなければならない」と主張。平和と、世界レベルでの共存を成し遂げていくために、世界の諸宗教機関、特に、バチカンとの対話を進めるアズハルの路線を評価した。

こうした事務総長の発言に対してタイエブ総長は、「世界平和と、あらゆる人々の平等の確立という国連の目標を達成していくために、アズハルは国連と協力する」と強調。加えて、「アズハルは、テロと対峙(たいじ)し、人間の友愛、平等、正義といった原則を築くことで、あらゆる人の和平というメッセージを広く届ける努力を惜しまない」と訴えた。そのために、「バチカンや世界教会協議会(WCC)といった、世界の主要な諸宗教機関との対話を、ムスリム長老評議会を通して強化していく」との決意を明言。その上で、自身が今年2月にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで、ローマ教皇フランシスコと共に署名した、人類の友愛に関する共同声明文をグテーレス事務総長に手渡した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)