「原爆の残り火を吹き消したローマ教皇」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)
原爆の残り火を吹き消したローマ教皇
京都市のNPO法人「アースキャラバン」は3月20日、異なる宗教と国籍を持つ13歳の少女5人と、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響を受けた被災者、1945年の原爆投下の被爆者で構成される使節団をバチカンに派遣し、同日のバチカン広場で行われた一般謁見(えっけん)でローマ教皇フランシスコに面会した。アースキャラバンは、人種、宗教、国籍、思想などの違いを超えて、地球規模で共生の精神を実現することによって、戦争や紛争、貧困のない平和な世界を目指している。
一昨年のノーベル平和賞授賞式で演説したカナダ在住の被曝者・サーロー節子さんを含む一行は、原爆投下後の長崎で、亡くなった幼児を背負う「焼き場に立つ少年」の写真を掲げ、福岡・八女市星野村で「平和の火」としてともされ続けている広島原爆の残り火を移したランプを持参。広島と長崎の悲劇を人類が再び繰り返すことがないようにとの願いを込めて、原爆の残り火を差し出し、教皇が吹き消した。
3月21日付のバチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」はこのことを伝えるとともに、原発事故の被災者たちについてリポート。2011年3月11日に起こった原発事故の恐るべき影響を受けた人々として紹介し、彼らが「苦と希望の体験を分かち合うために日本から来訪した」とし、「事故から8年が経過した今、被災者たちの存在を忘れないようにとの願いを訴えている」と報じた。また、パレスチナ自治区のベツレヘム(キリストの生誕地)から一行の一員として参加したジャンナ・イブラヒムさんは、「世界から戦争がなくなったら、この火を完全に消しますから」と言いつつ、教皇に吹き消すように願ったとも伝えている。
アースキャラバンの活動を「平和の名によって、各国の国民を和解させることを目的とする諸宗教の世界巡礼」と呼ぶバチカン日刊紙。一行が「世界の苦の地」である「ヒロシマ、アウシュビッツ、スレブレニツァ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)、各地の難民キャンプ」を巡り、「次はベツレヘムを目的地としている」と記した。
バチカンのサンピエトロ大聖堂では3月11日、東日本大震災から8年に合わせた追悼ミサが、アンジェロ・コマストリ枢機卿(同大聖堂名誉司祭長)の司式によって執り行われ、在留邦人らが鎮魂の祈りを捧げた。12日の共同通信社電子版が伝えている。