仏教の智慧を子育てに 本会バンコク教会がクロントイ・スラムで家庭教育セミナー
タイの立正佼成会バンコク教会が6月16日、バンコク最大の貧困地区として知られるクロントイ・スラムで、初めて家庭教育セミナーを開催した。住民のリーダー約60人が参加。この地区でコミュニティーの開発や教育支援に取り組む「ドゥアン・プラティープ財団」が、会場の提供や参加者への呼び掛けに協力した。
プラティープ財団は、同スラム出身のプラティープ・ウンソンタム・秦氏が「一日一バーツ学校」と呼ばれる私塾を同地域で開いたことに始まる(当時、1バーツは約10円)。1979年に財団を設立し、教育里親や幼稚園の運営、住民のための生活改善事業などを展開する。
本会と同財団の交流は70年代後半から始まり、本会一食(いちじき)平和基金による助成が行われたほか、プラティープ氏による本会訪問、本会会員のボランティア派遣などを通して親交を重ねてきた。さらに、会員の中には、同財団が実施する教育里親になり、子供たちへの支援を続ける人もいる。
同スラムには現在、10万人が暮らすが、居住権を認められていないために立ち退きなどの不安が付きまとう。生活環境のほか、離婚や青少年の非行といった家庭問題が深刻で、犯罪率も高いといわれる。
こうしたスラムの状況に対し、家庭教育セミナーの実施を発案したのは、バンコク教会のマユリー・ムックダートーンさん(51)。貧しさと劣悪な環境に加えて、社会からさげすみの目を向けられ、自尊心が傷つきやすい子供たちが健全に育つには、周囲の大人が子供をより深く理解し、豊かな人間に育てていく必要があると考え、提案した。本人は10年前から日本人講師による家庭教育講座の通訳を務め、家庭教育を子育てに大いに役立ててきた。当日は講師を務めた。
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