【脳リハビリテーション医・酒向正春さん】2万人以上の健康回復と介護不要な生活をサポート 健康寿命の延伸と利他の心で幸せな人生を

健康寿命が延伸する社会を創造

――健康増進のためには、筋肉強化と共に、心を整えることも大切でしょうか

そうですね。心、つまり脳を使って思考を巡らせることも、健康寿命の延伸に不可欠です。脳を活性化させる練習として、自分が楽しく感じることを意識して見つけてください。人との交流もなく家にこもると認知症に向かうので、家族や友人をはじめ歌手やスポーツ選手など自分が交流したい人がいることも重要です。

また、自分が自分のために行う行動よりも、誰かを喜ばせるための行為に、脳をより活性化させる効果があることが、ホルモンの働きから分かっています。そこで考えたいのは、家庭内や地域社会での自分の役割です。夫婦で生活していても、高齢になり関係性が薄れ、孫にばかり気持ちが向いて夫婦仲が良くないのは、心身の健康維持にとって一番悪い状況です。夫婦は共に年を重ね、身体的・思考認知的に衰えていくからこそ、衰えを互いに認め合うことができます。その中で「やってもらって当然」という考えの間違いに気づき、相手が喜ぶことを、脳をフル回転させて考え、感謝を伝えて行動する。それが体にも良いのです。

自分だけが楽しくて相手が喜びを感じなければ、心から楽しめませんよね。相手に楽しんでもらうことで自分も真の幸せを得て、また楽しませようと思う、そういう循環が大切です。

――先生ご自身が楽しいと感じるのは、どんなことですか

私はスポーツ観戦が楽しみです。仕事の合間に、「今日は大谷翔平選手は打ったかな」などとスマホのネットニュースで確認し、「土壇場でホームランを打てる大谷君ってすごい」と感動します。日本人が世界の舞台で活躍する状況を同じ時代の人間として見られて、こちらも活力をもらえる気がするのです。このため、あらゆるトップアスリートの活躍に注目しています。

また、私が経営する病院にいるスタッフが今日も頑張って仕事をしてくれた、スタッフの成長がみられたということへの感謝も湧いてきます。入院患者さんにも毎日、笑顔で声をかけて様子をうかがいながら、患者さんの不眠症が治った、食欲が出るようになったなどの無数の変化に触れることで「良かったな」と心から思え、私の脳は小さな幸せでいっぱいです。皆さんも、こうした日常の何でもない出来事から自分ごとのように喜べる幸せを見つけてみてはいかがでしょうか。

現代は「人生100年時代」といわれています。私は今、64歳ですが、103歳までは生きて楽しむつもりです。それはやりたいことがあるからです。やりたいことがあると人生は楽しくなり、気持ちよく生きたいと思えるようにもなり、人の笑顔を見るだけで幸福を感じることさえできます。日本中の皆で楽しく筋トレを行い、心を整えて交流する日々を過ごしながら、一緒に健康寿命を延ばせる社会をつくりたい、それが私の大きな希望です。

プロフィル

さこう・まさはる 1961年、愛媛県生まれ。愛媛大学医学部卒業後、脳神経外科医として大学病院や総合病院で手術に明け暮れる日々を過ごす。デンマーク国立オーフス大学助教授時代に脳の自然回復力や、脳科学研究とリハビリテーション医学の連携を学ぶ。帰国後は脳リハビリテーション医に転向し、現在、大泉学園複合施設「ねりま健育会病院」院長と超強化型老健「ライフサポートねりま」管理者を務め、東京都練馬区と連携した練馬健康医療福祉都市構想を推進する。

書籍紹介

酒向正春氏の書籍『筋肉革命95 何歳からでも実現できる95歳で当たり前に歩いて楽しむ人生を』では、「脳筋連関」の原理を基に、何歳からでも筋肉トレーニングを始めることによって筋肉量・筋力の向上や脳機能の回復につなげる実践法について、写真付きで平易に解説。老化のメカニズムや対処法、老後の楽しみ方なども紹介します。日刊現代から書店・通販等で絶賛発売中です。定価1650円(税込)。