5月の庭野会長の法話から

真に有り難いこと

仏さまの教えの中に、『法句経(ほっくぎょう)』という短い詩のような教えがあります。その中に、仏さまの教えを一番簡潔に説かれている言葉があり、私はこの言葉を大事にしています。それはこのようなものです。

「人の生(しょう)を受くるは難(かた)く、やがて死すべきものの、いま生命(いのち)あるは有難(ありがた)し。正法(みのり)を耳にするは難く、諸仏(みほとけ)の世に出(い)づるも有難し」

これを現代語に訳せば、「人が生命を受けることは難しく、必ず死ぬことになっている者が、たまたま今生命があるということは滅多(めった)にないことだ。生命を受けたとしても、その生きている間に、正しい教えに接することは滅多にないことであり、仏さまが満ち満ちているこの世、地球に生まれることも滅多にないことである」と、説かれているのです。このわずかな言葉の中に、仏さまの教えそのものがあると私は受け取っています。

私たちが人間として生まれてきたことは、本当に不思議で有り難いことです。しかし、死なない人間はいません。すべての人が死にます。「やがて死すべきものの、いま生命あるは有難し」。今、私たちが生きている、このことはとても有り難いことです。

「正法を耳にするは難く」。この世に生まれてきて、正しい教え、仏さまの教えを耳にすることも本当にまれな、有り難いことだと述べられています。

そして、「諸仏の世に出づるも有難し」。こうして地球上に私たちが今、生命を頂いていること、これほど有り難いことはないのだということです。

ですから、私たちは、生命を頂いた、それだけで感謝し、有り難いと受け取って、喜んで日頃の生活を送ることが一番大事であります。
(5月15日)

今を大切に生きる

英語に「プレゼント(present)」という言葉があります。プレゼントは「現在」のことですけれども、それはまた、「贈り物」のプレゼントと同じスペルです。

ですから、現在、私たちがこうして人間として身に受けていることは、すべてがプレゼント(贈り物)であります。そして一番大事なプレゼントは、今、現在であります。今、この現在を有り難く受け取って生きていくことが、プレゼントを頂いた者のなすべきことです。

病気を持っている人もいるでしょうし、生きているのがつらいという人もおられます。しかし、今、生命を頂いていることは有り難いのだ、そのことをしっかりと受け取りなさいというのが、仏さまの教えです。今、大事な頂きものをしているのだと受けとめて、しっかりと生きていくことは精進にもつながります。そして、正法(みのり)――仏さまの真理、法を人さまにお伝えすることが私たちにとって一番大事であると教えられています。
私たちは有り難いプレゼントをもうすでに頂いているわけですから、そのことをしっかりと受けとめて、日々精進することが大切であるとつくづく思います。
(5月15日)