年頭法話 立正佼成会会長 庭野日鑛

歴史・伝統を尊重しつつ前進する

創立百周年へ、全会員が心を一つにし、幼少年・青年達の育成に全力を

あけまして、おめでとうございます。

今年も日々真(ま)っ新(さら)な心で、元気に精進する一年にいたしましょう。

新年の「新」という文字は、「辛(しん)」と「木」と「斤(おの)」を組み合わせてできています。「辛」は苦労や努力を意味し、「斤」は木を切る大きな斧(おの)のことです。すなわち、よく木を愛し、育て、それを努力して加工し、新たなものにして活用することを表しています。

人間の世界にあてはめれば、先人の築き上げた歴史や伝統を学び、尊重しながらも、現代にふさわしい創造力を働かせ、力を尽くして新しいものを築き上げていくことです。

「新」という文字に込められた大事な意味を深くかみしめて、今年一年、共に前進してまいりたいと思います。

さて私は「令和八年次の方針」を次のようにお示ししました。

昨年、日本は昭和百年とも言われました。昭和十三(一九三八)年に創立された本会は、十二年後の令和二十(二〇三八)年には百周年を迎えます。

そのことを肝(きも)に銘(めい)じ、今年も私たちは信仰生活を通して、未来を担(にな)う幼少年・青年達を如何(いか)にして人道(じんどう)に導き、人間形成をはかるか、如何にして家を斉(ととの)えていくか、更に、日本の伝統を受け継いで立派な国を打ち立てていくか、お互い様に、日々活(い)き活(い)きと務めて参りましょう。

平成三十年、本会の創立八十周年に際し私は、来たるべき創立百年を展望して、人を植える(育てる)という根本命題(こんぽんめいだい)に全力を尽(つ)くしていくことが私たちの大事な務めである、と申し上げました。

未来を担う幼少年・青年達を如何にして人道(菩薩道)に導き、人間形成をはかるかは、本会のみならず社会においても最も優先されるべき課題であります。

ご存知(ぞんじ)のように、本会は、「斉家(せいか)(家庭を斉える)」を根本(こんぽん)の方針としています。なぜなら家庭は、人間形成の根本道場であるからです。

親が、ご宝前を中心とした生活をおくり、常に明るく、優しく、温かい言動(げんどう)を心がけることは、子どもたちの人間形成に決定的な影響を与えます。

なかでも重要なのは、幼少年期からの関わり、つまり家庭での教育であります。

「七五三」は、日本の伝統行事として知られますが、この七歳、五歳、三歳という年齢は、本来、学校教育の前の家庭教育が最も必要とされる時期を表しているといわれます。

そして、頭脳が一番純真(じゅんしん)に、鋭敏(えいびん)に働くのは、十歳前後から十三、四歳まで。視力が一番あるのは、九歳から十歳で、よく「あの子は穴のあくほど見る」といわれるような年頃です。想像力、連想力、記憶力は、十一、二歳が最も旺盛(おうせい)で、十五、六歳で堂々たる人間になるということです。

こうした大事な時期に家庭での教育が十分になされず、学校教育に任(まか)せきりでは、青少年育成など望むべくもないことを心すべきでしょう。子どもや若者を取り巻くさまざまな社会的な課題も、結局は親の自覚と責任、行動にかかっているといっても過言(かごん)ではありません。

「政治も経済も幼少年の教育のためにこそ存在する」といわれた方がいます。つまり大人達が、青少年の健全な育成にふさわしい世の中をつくり上げなければならないということであります。

若い世代が、自分の国に誇りを持って生きることは非常に大切なことです。自分の国を大切に思い、敬(うやま)えるようになれば、青少年の育成も自(おの)ずと進展するからです。

とりわけ日本は、最も歴史、伝統のある国の一つです。世界にも比類(ひるい)のない天皇・皇室を戴(いただ)き、そのもとに建国以来今日まで、国民が和となり、豊かな精神文化を築いてきました。

また日本は、上代(じょうだい)の頃、国名を「大和(やまと)」と定め、「大いなる平和」「大いなる調和」の精神を終始一貫することを、国家的な理想としてきました。

聖徳太子(しょうとくたいし)は、「和を以(もっ)て貴(たっと)しと為(な)す」という言葉を十七条憲法の第一条に掲(かか)げられています。

こうした平和・調和を重んじる日本の伝統を受け継いで、立派な国を打ち立てていけるよう務めることは、「人を植える」という観点からも極めて重要であります。

十二年後の創立百年を目標として、全会員が心を一つにし、各々(おのおの)の立場で、幼少年・青年達の育成に全力を尽くしてまいりたいと思います。