立正佼成会 庭野日鑛会長 9月の法話から
「なんでなんで」
スペースシャトルに搭乗した日本人宇宙飛行士の山崎直子さんという方がおられます。その方が子どもさんのことを、こういうふうに述べられています。これは2016年4月頃の新聞(日本経済新聞)に載っていたものです。
「なんで話すと聞こえるの。なんで漕(こ)ぐと自転車は進むの。私はママから産まれたの? じゃあママは誰から産まれたの。そのまたママは? 地球は誰から生まれたの。そのずっと前は、私たちはどこにいたの。4歳の次女の『なんでなんで』質問攻撃である。長女の時もそうだったが、無垢(むく)な疑問だからこそ、実に本質を突いていて、はっとさせられることばかりだ。
例えば音。それは空気が震えて耳に届くから……。空気って何。誰が空気を作ったの。一つの疑問は更なる疑問を呼ぶ。脳の神経回路が80%まで急成長を遂げるといわれているこの幼児期、子供は誰もが好奇心にあふれている」
このように述べられています。みんな幼い頃は童心、無垢な、純真な「なんでなんで」という心を持って過ごしてきたわけであります。成長して、大人になってくると、こうした「なんでなんで」という疑問をあまり感じなくなってしまいます。幼い頃の、童(わらべ)の頃の「なんでなんで」ということは、私たちが生きていく中で、本当は一番大切なことでありますけれども、年を取ってくると、だんだんとそうしたことを忘れてしまって、ただぼさっとして生きてしまいます。私などは今、月に最低2回は(法話で)、皆さんにお話をしなくてはいけないから、ぼさっと生きていられなくなってしまったのですね。この子どもさんたちのように、「なんでなんで」をいっぱい学んでおかないと、皆さんにお話ができません。
(9月10日)
旦那
一家の主人のことを「旦那(だんな)」と言います。私たち仏教徒にとって、旦那という意味はとても大事であります。この旦那というのはよく調べてみますと、インドのサンスクリット語の「ダーナ」という言葉に由来するものであり、そこには布施という意味もあります。布施とは、仏教でいうと菩薩の六波羅蜜(ろくはらみつ)の最初にこの言葉があります。菩薩が布施をするということは、一家の主人が、一家の経済的な支え、また精神的な支えとなることです。インドのサンスクリットの「ダーナ」を漢字「旦那」にして、これには音訳も入っているわけですね。布施とは、精神的なことでは、慈悲心とか情け、思いやりという意味があります。ですから、布施というのは、家族に対してだけでなくて、職場や地域社会、国や世界においても、慈悲心のある、情け深い思いやりを持って働く、ということです。一家の主人がしている働き、そのダーナから来ているのです。
臓器移植などをする時の「ドナー」という言葉がありますけれども、これもどうも旦那から来ているようであります。人に慈悲心、情け、思いやりをかける、そしてまた具体的にいろいろな臓器を提供する、基金を贈呈する、そういう役割も意味しているのです。
(9月15日)





