立正佼成会 庭野日鑛会長 3月の法話から

米寿を迎えて

本年のお正月に数えで88歳、いわゆる米寿を迎えさせて頂きました。また、3月20日には満87歳になります。この「数え」をいろいろな方がとても大切なことと言われています。その中の一つをご紹介します。

この方は宇宙を研究する物理学者(佐治晴夫・鈴鹿短期大学名誉学長)で、こういう考え方を示されています。

「第二次世界大戦が終わるころまでは、日本では、お正月がくるたびに歳を重ねる『数え年』が一般的でした。

ところが、今では、すべてが満年齢。しかし、よく考えてみると、満年齢というのは、今まで実質的に生きてきた経過年齢のことであり、生物学的な意味はあっても、未来への夢がまったく感じられません。一方、『数え年』は、お正月を境にして、日本全国の人が一斉に年を重ねるわけですから、すべての人たちが、一緒になって、豊かな未来に向かって新たな心で船出しようという気持ちが表れています。

未来に希望がもてなくなっている人がたくさんいるという現代、一度、『数え年』にしてみたらいかがでしょう」。

こういう意見です。私もこのことに大変関心があり、本当にそうだなと思います。今年、米寿を迎え、皆さまにお祝いして頂き、本当にありがとうございます。

まさに神仏から賜ったいのちであり、天地万物(ばんぶつ)に支えられて今日があることに心から感謝したいと思います。
(3月5日)

教えを伝えよう

大学時代の恩師(坂本幸男・元立正大学学長)が、『躍進』に寄稿された言葉があります。『仏教徒の使命――布教なくして宗教なし』というタイトルです。

「仏教という宗教の本質は成仏の追求であるといえますが、その成仏は全人類の救済をまって完成するものでありますから、布教のない宗教というものは成り立たないと言えるのであります。

法華経の教えに依りますと、私達は、一方の立場からは成仏を目ざして修行に精進すると同時に、もう一方の立場からは仏の使いとして布教宣伝に身命を惜しまないところに、真の仏教徒としての生活があるといえるのであります」

このように、坂本先生は結んでおられます。仏教徒として、また法華経による成仏を目指すあり方、修行精進のあり方が、ここに述べられているように思います。皆さまと共に、今後とも、仏教徒の使命を果たしていきたいと念願をしているところであります。
(3月5日)

学ぶことが生きること

「学生」という言葉は、特に大学生を意味すると言われています。私たち人間は常にいろいろなことを学びながら生きています。ですから、大学に通っている学生だけでなく、私たち誰もが、常に学びつつ生きています。ですから、「学生」とは、「学ぶことが生きること」である、と受け取ることもできます。

もちろん私たちには分からないこと、知らないことがたくさんあります。一人ひとりの人間が生きている、そのことだけでも、よく見つめてみますと不思議であります。

私たちはときどき、自分の言動で、人を嫌な気持ちにさせてしまうこともあります。そうした出来事を通して毎日毎日学んでいく、それが人間として大事なことだと思うのです。

「人間」とは「人」の「間」と書きます。人は社会的な動物だと言われるように、人と人の関係の中で生きていますから、自分のことだけでなく、人さまのことも考えて生きていく。「学ぶことが生きること」という気持ちで、常に学んで生きていくことが大切ではないかと思います。
(3月15日)

日々の積み重ねを大切に

私は、いつの間にやら、米寿になってしまいました。お釈迦さまは80歳でお亡くなりになったと伝えられていますから、私は80歳になったときは、「仏さまと同じになった」と思ったのですけれど、それからもう8年も経ち、お釈迦さまの年齢を超えてしまいました。

中国には道教という教えがあって、人間の寿命は162歳(全寿)だと教えられています。そして、その半分の年齢、81歳を「半寿」と言うそうです。本来は162歳が寿命ですから、半寿はまだ若いのだから油断するな、もっともっと長生きをして精進しなさい、と教えているそうであります。

開祖さまは満で92歳、もうちょっとで93歳になるところで亡くなりました。私は何とか開祖さまの年齢を超えたいなと、今、思っているのですけれども、こればかりはもう分かりません。

論語の中で、孔子さまがこういうことをおっしゃっています。

「性相近きなり、習ひ相遠きなり」。人の生まれつきは、だいたい同じようなものである。しかし、日々の習慣によって大きく隔たってしまうのだと。人間は生まれたときは変わらないのだけれども、習慣や躾で相当違ってくると、孔子さまは話されているのです。

学校の先生をされた木村和夫という方の『習慣』という詩があります。

   毎日毎日が習慣づくり

 勉強をサボるという習慣

 勉強を真剣にやるという習慣

 本を読まないという習慣

 本を読むという習慣

 字を乱雑に書くという習慣

 字を丁寧に書くという習慣

 小さな声でぼそぼそと言う習慣

 はっきりとした声でしっかり言う習慣

 毎日毎日が習慣づくり

 挨拶をしないという習慣

 挨拶をするという習慣

 他の人の言葉に耳を傾けないという習慣

 耳を傾けるという習慣

 人の悪いところを見つけようとする習慣

 人の良いところを見つけようとする習慣

 自分のことを優先しようとする習慣

 他の人のことを優先しようとする習慣

 何気ない一回一回のこと

 何気ない一日一日の積み重ね

 その中で、

 いまのあなたは、作られてきたし、

 これからも作られていくのです。

 どんな習慣を自分のものにしていくか?

 何気ない一回一回のこと

 何気ない一日一日の積み重ね、

 その中にこそ、

 あなたがいるのです。

誰もが生まれたときはあまり変わらないけれども、習慣によって違ってくるという詩であります。先ほど「性相近きなり、習ひ相遠きなり」と論語の有名な言葉がありましたが、このことは本当に言えるわけです。

私たちは人間として、いつも学んで生きていく「学生」として、日々、しっかりとした習慣をつけていくことがとても大切です。
(3月15日)