立正佼成会 庭野日鑛会長 6月の法話から

画・茨木 祥之

体をいたわる

佼成会では、親孝行の大切さが教えられてきましたが、孝行は、仏教よりは、儒教の中でよく教えられています。中国の『孝経』の中にも、こういう言葉があります。

身体髪膚(しんたいはっぷ)これを父母に受く。敢(あえ)て毀傷(きしょう)せざるは孝の始めなり

「身体髪膚」とは、体と髪の毛と皮膚のことですから、体全体を指します。これを父母から頂いたのだということです。毀傷とは、そうした体を壊す、損なうということですから、不健康にしたり、病気になったりしないで、健康でいることが大切であるとなります。これが「孝の始め」、親孝行の一番始め、第一のことである――このような意味になります。

こう教えられても、私たちは、なかなか親孝行ができず、孝行をしないうちに、父母が亡くなってしまう人が多いと思います。体が健康であることが、「孝の始め」、親孝行の始めだというのですから、こういう短い『孝経』の言葉を吟味して、健康で、元気で日々を過ごしていきたいものです。

儒教では、親に対する孝、孝心、親孝行の心があってこそ、本当の人間になることができると教えられています。孝心、親に対する孝の心がないと、本当の人間になれない、というほど大切なことです。

直接的に生んで頂いた親に対して孝行ができないとなると、あらゆる人間関係が損なわれかねません。そのような孝心を、私たちも大事にして、また親として、子供たちに、次世代の人たちに伝えていかなければならないと思います。
(6月15日)

苦しみの原因

ストレスをなくす、ゼロにする東洋的な方法が、二つあるといわれています。

一つは、「世の中は、自分の思い通りにならないのだ」と思い定めること。私たちは、「自分の思い通りにしたい」と考えます。しかし、世の中のことは、何一つとして自分の思い通りにはならないわけですから、「もう思い通りにはならないのだ」と思い定めることが大事になります。

二つ目は、思いを持たないことです。人間は、生きている間、いつも何かを思っていますから、これはなかなか大変なことです。

とにかく、余計なことを思わない。簡単に考えていく。いろいろなことを複雑に考えない。そういうふうに心を切り替えていく。また、いろいろな訓練を通して物事の受け取り方を学び、ストレスがかからないようにしていけば、私たちは心を病むことはなく、悩み、苦しみをなくすことができる、ゼロにすることができるということです。

お釈迦さまの教えの中にも、悩み、苦しみは、執着からきているとあります。「自分の思い通りにしたい」――それが執着です。悩み、苦しみを取り去るにはどうしたらいいか――お釈迦さまは、執着をなくしなさいと教えられているのですから、私たちがそこに気づくのは、根本的なことになります。
(6月15日)