バチカンから見た世界(58) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

さらに、韓国政府には「(米朝間の)調停役としてだけでなく、問題(南北統一)の当事国として自身の義務を全うするように」と要請し、北朝鮮政府に対しては「分断に終止符を打ち、70年以上にわたってこの土地に縛り付けられてきた鎖を断つために、この機会を生かすことを」と切望している。同時に、米国政府には、韓国と北朝鮮の努力を支援し、米朝首脳会談が世界平和への礎石となれるように」と、中国、ロシア、日本政府に対しては、4月と5月の二つの首脳会談と、それ以降の和平プロセスを支援するよう要望している。

ソウルのカトリック大司教と平壌の教会管轄を兼任する廉洙政枢機卿は同24日、ソウル市の大司教座聖堂で南北首脳会談の成功を祈るミサを捧げた。この時の説教では、「朝鮮半島に吹く平和の風」を「神の摂理」と受けとめているとした廉枢機卿。「朝鮮半島は核兵器の脅威にさらされ、戦争をもいとわないとする緊張状態が続き、暗雲と不安に包まれていただけに、3日後(27日)に行われる南北首脳会談が、真の和平を希求する韓国国民に対して、神からの恩恵という貴重な機会になるように」と願った。その上で、南北首脳会談という歴史的な出会いと対話の実現に向けて尽力した、あらゆる関係者に感謝の意を表し、「核兵器を廃絶し、この地に真の平和を構築し、世界平和のために力を尽くす全ての人々を、神が祝福してくださるように」と祈った。

一方、キリスト教のプロテスタント諸教会や聖公会が中心の韓国キリスト教教会協議会(NCCK)は、南北首脳会談の日まで毎日正午に1分間、朝鮮半島の和平実現への祈りの実施を広く求めた。首脳会談の当日には、加盟する教会に「昼食か夕食時に断食して祈りを捧げよう」と呼び掛けた。

教皇フランシスコは、同29日に行われたバチカンでの正午の祈りで、「金曜日(27日)の南北首脳会談の成果」に言及。朝鮮半島の非核化を実現し、核兵器の脅威から解放するため、誠実な対話の実現に向けて、「(韓国と北朝鮮の)両指導者の勇気ある努力を祈りによって支援する」と述べた。さらに、「平和と兄弟愛に満ちた未来への希望が、失望に変わることがないよう、互いの協力が続けられ、朝鮮半島の愛する人々と全世界に善の実がもたらされるように」と祈りを捧げた。