バチカンから見た世界(36) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)
“ヒバクシャ”の声に耳を傾けよ――ローマ教皇
「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」にあたる9月26日、ローマ教皇フランシスコは「この死の道具を廃絶していくために、核不拡散条約(NPT)を機能させ、核兵器のない世界に向けて取り組んでいきましょう」とツイートした。教皇のアカウントは、9カ国語(イタリア語、スペイン語、英語、ポルトガル語、ポーランド語、ラテン語、フランス語、ドイツ語、アラビア語)で展開されており、全世界で約3700万人(8月2日現在)がフォローしている。
教皇がNPTに言及した背景には、北朝鮮がNPTの締約国でありながら、離脱を表明して核開発を続ける問題があるからだとされる。これに先立つ同20日、ニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約の署名式典が行われ、同市国を代表してバチカン外務局局長のポール・リチャード・ギャラガー大司教が出席し、署名していた。
同26日のバチカン放送は、「フランシスコは、彼が教皇に選出されて以来、大きな人道上の影響をもたらし、各国の富を浪費するだけの核兵器の廃絶を強く訴えてきた」と報道。この中で、同放送による「教皇のアピールは、世界で聞き入れられたか?」との質問に対し、バチカン人間開発のための部署次官のシルバーノ・トマシ大司教は、「教皇フランシスコが2014年(教皇に選出された翌年)、オーストリア・ウィーンで開催された第3回『核兵器の人道的影響に関する国際会議』にメッセージを送り、核兵器の使用のみならず、保有をも容認しないとの立場を表明した」と強調した。さらに、この国際会議を機に創設された核兵器禁止条約の交渉会議の委員長に、教皇は「具体的な提案」を記した親書を送り、提案が条約に「実質的に盛り込まれた」と明かした。