広島、長崎、沖縄の各地で慰霊式典

会員66人が参集した広島教会道場では、辻谷教会長を導師に読経供養が行われた(同教会提供)
先の大戦の終結から80年。戦争犠牲者を悼み、恒久平和の祈りを捧げる催しが今夏、各地で開催された。広島、長崎の慰霊供養、沖縄での平和の集いを紹介する。
【広島】
8月6日、「原爆の日」を迎えた広島教会は、「広島原爆殉難犠牲者慰霊供養」を厳修。同教会道場には会員66人が参集した。また、式典の様子はインターネットの動画共有サイトでライブ配信(会員限定)され、会員たちは犠牲者の冥福を祈り、慰霊の誠を捧げた。
式典では、女性会員(68)と支部長(66)による「被爆二世のメッセージ」が発表された。次いで黙とう、読経供養が行われ、導師をつとめた辻谷修一教会長が回向文を奏上し、焼香した。
あいさつに立った辻谷教会長は、世界平和を目指した庭野日敬開祖の言葉に触れながら、宗教や文化、民族だけでなく、さまざまな立場や意見の違いを乗り越え、地球上の全ての人々を救い切ることが真の世界平和であると説明した。その上で、一人ひとりが「まず人さま」の精神で菩薩行を実践して心の中に平和を築く大切さを強調。一つの思いが三千世界に影響を及ぼす「一念三千」の教えを念頭に置いて、「平和を祈る心を、皆さんの笑顔と一緒に、サンガが一丸となって地域社会に広げ、世界平和を目指して、共に実践させて頂きましょう」と語った。
この後、被爆体験の伝承活動を行うNPO法人ヒロシマ宗教協力平和センター(HRCP)の波多野愛子理事が、『石井冨美子さんの被爆証言画』と題して講話した。
18歳で被爆した石井さん(98)から証言画の依頼を受けた画家の長坂誠氏が描いた実際の画を見せながら、石井さんが母親との避難中に出会った一人の少年との悲しい思い出を紹介。「若い人たちには絶対に被爆のつらさを味わわせたくない」と語った石井さんの思いを引き継いで、原爆や戦争で多くの人が悲しみ苦しんだ事実を後世に伝え、争いのない世界の実現を考えるきっかけにしてほしいと願う長坂さんに感謝を表した。その上で、波多野さんは今後も石井さんの被爆体験の伝承活動を続けながら、「長坂さんのように人の心の痛みを受けとめて平和を築こうとする人が増えていくよう、この証言画と共に伝え続けていく」と語った。
【長崎】
「長崎を最後の被爆地に」との切なる願いのもと、長崎教会は9日、教会道場で「原爆犠牲者慰霊法要」を催し、会員35人が集った。

式典の中で久井教会長は、庭野開祖が大事にしていた人との触れ合い方を実践する大切さを語った
式典の冒頭、原爆で犠牲になった御霊に対し、被爆者の女性会員(83)、被爆二世の支部長(64)が諏訪神社の神水を奉納した。続いて、久井快哲教会長を導師に読経供養が行われ、庭野日鑛会長の回向文が奏上された。
講話に立った佐原透修総務部次長(渉外グループ)は、ロシアとウクライナの戦争が始まった頃から式文に入れられた「絶対非戦」の言葉には、「二度と戦争を起こしてはならない」「国際紛争を武力で解決してはならない」という庭野日敬開祖の懺悔(さんげ)と決意が込められていると説明。戦争が起こる原因の一つは「欲」だと話し、一人ひとりが「少欲知足」を実践する大切さを伝えた。
あいさつで久井教会長は、目の前の人と触れ合う中で、周囲の人と仲良くする、困っている人に手を差し伸べるといった庭野開祖が大事にしていたことを共に実践していきたいと語りかけた。

式典後、長崎教会の青年部員らのサポートの下、平和学習に訪れていた北広島教会の学生部員らが「龍踊」を体験した
前日の8日には、長崎、佐世保、諫早の3教会が加盟する長崎県宗教者懇話会主催の「第53回原爆殉難者慰霊祭」(主管・長崎県明るい社会づくり運動推進協議会)が、原爆落下中心地公園で営まれ、諸宗教者や市民約700人が参集した。
【沖縄】
第二次世界大戦末期、沖縄本島で熾烈(しれつ)な地上戦が繰り広げられた。一般市民を巻き込んだ沖縄戦の犠牲者は日米合わせて20万人以上とされる。その御霊(みたま)を鎮め、絶対非戦を誓って建立された摩文仁の沖縄平和祈念堂に、終戦から80年目となった15日、エイサー太鼓の音が響いた――。
『沖縄から世界へひろげよう平和の祈り』をスローガンに、今年も沖縄宗教者の会による「第33回祈りと平和の集い」が行われた。沖縄教会の佼琉太鼓によるエイサーで開式した集いには、同教会の会員を含む宗教者ら211人が参集した。

福田教会長は、沖縄教会の会員を含む宗教者ら211人を前に開会あいさつを行った
福田昌弘教会長の開会あいさつに続き、護国寺の名幸俊海名誉住職を導師に平和への祈りが捧げられ、次いで参集者全員で黙とうした。
青少年による「誓いのことば」は、今年は沖縄県神社庁から小中高生が登壇。3人で言葉をつなぎながら、国や宗教の垣根を超えて互いを理解し、尊重し、祈る心を広めていくことが平和な社会の一歩になると語った。80年前に戦争があった沖縄で、若い世代が率先して「学校や地域で平和について真剣に学び、語り続けていく」と誓った。
沖縄県の玉城デニー知事、祈念堂のある糸満市の當銘真栄市長からのメッセージが披露された後、代表献花が行われた。