楽生(らくいき)~楽に生きるを極めるヒント~ (1) 文・日本笑いヨガ協会代表 高田佳子

赤ちゃんはみんな天才
赤ちゃんがやってきた日を、覚えていますか? 新しい家族となった赤ちゃんに初めて会った日のことです。私が小学校1年生、7歳の時、妹が生まれました。その赤ちゃんは、雪が降るとても寒い日に、母と祖母と病院からタクシーで帰ってきました。目がくりくりと大きくて、小さな手、元気にバタバタ動かす足の全てがものすごくかわいく、愛(いと)おしいと思いました。実は、59年前の話です。その日のことを、はっきりと覚えているほど、その子がかわいいと思い、その赤ちゃんの姉になったことが、嬉(うれ)しくて、誇らしくて、心から感動したのです。
だんだん成長するにつれ、大きな黒い瞳やきりりとした眉といった美しいと感じる要素のほかに、だんごっ鼻、大きな口、色黒という特徴も出てきました。二人姉妹だし7歳半離れているので、かわいい存在ではありましたが、私は妹に対して、容姿の気になるところを何度も何度も直接言い、彼女はそれを聞いて育ちました。姉の嫉妬だったかもしれません。おそらく、さしたる悪意もなく、無意識に指摘していたと思います。
どの赤ちゃんも、完璧な存在として生まれてきます。親や家族、周囲の人は、ほとんどの場合、そのかけがえのない新しい命を称賛とともに受け入れます。しかし、少し時間が経つと、無意識に否定的な言葉を投げてしまいます。
言葉を理解しない時期の赤ちゃんは、無敵です。寝返りを打ちたいと思ったら、何回も何回もチャレンジします。それができるようになったら、今度はハイハイを始めます。筋肉が発達していないはずなのに、何かにつかまって立ち上がろうとします。手を離して歩き始めます。何回失敗して転んでも、決してチャレンジをやめません。

イラスト・みよし
私たち人間は、赤ちゃんの頃、自分のやりたいことに何度も何度も何度もチャレンジし、出来るようになるまで続けました。今のあなたはどうでしょう。自分のやりたいことに制限をかけてしまっているのではないでしょうか。それは、小さい頃に作ってしまった足かせが原因です。
周りの人の無意識の言葉が、将来の制限につながってしまった可能性があるのです。私が妹に、初めて会ったときの感動を忘れずに「かわいい、かわいい」と言い続けたなら、モデルか女優になる未来が待っていたかもしれません。途中で「鼻ぺちゃ」とか妹に向かって言ってしまったこと、半世紀を経た今になって猛反省しています。
善意で制限をかけてしまっている場合もあります。「プロ野球選手なんて、夢みたいなこと言ってないで、早く受験勉強しなさい」「うちの家系で秀才はいないから、高望みはやめて」といった言葉です。相手のためを思って言っているつもりが、実は子どもの可能性に蓋(ふた)をしてしまった可能性があるのです。
自分に制限をかけず、やろうと思ったことに何度でも挑戦した赤ちゃん時代を経験していない人はいません。赤ちゃんに戻ることはできませんが、すさまじいエネルギーで、やりたいことに向かっていた無敵の力を取り戻すことは、自分が望めばできるかもしれません。エネルギーを内側から湧き出させるために、まずは笑トレしましょう。
今月の笑い
「はい次!」笑い
YouTube「高田佳子の笑トレで楽生」で、笑いの体操の動画が見られます。