第42回庭野平和賞 国際NGO「ムサーワー」に決定

「第42回庭野平和賞」を受賞したムサーワー© 2009 Musawah
「第42回庭野平和賞」の受賞団体が、イスラームの教えをもとに男女平等や正義、人権保護に向けた啓発活動を国際的に展開している運動体「ムサーワー(Musawah)」に決まった。公益財団法人庭野平和財団(庭野日鑛名誉会長、庭野浩士理事長)が2月18日、京都市内のホテルで記者会見を開き、席上、庭野理事長が発表した。
イスラーム社会で男女平等目指す世界的運動体
庭野平和賞は、宗教的精神に基づいて宗教協力を促進し、世界平和の推進に顕著な功績をあげた個人または団体に贈られる。世界70カ国、約400人の識者、宗教者らが推薦した候補者の中から、庭野平和賞委員会の厳正な審査によって選出される。
今回受賞が決まった「ムサーワー」は、マレーシアのムスリマ(女性イスラーム教徒)の人権擁護活動を行う「シスターズ・イン・イスラーム」(SIS)の代表であったザイナ・アンワール氏をはじめとする12人の女性活動家らが共同で創立。アジアや中東、アフリカなどさまざまな国から学者や法律家、NGO関係者といった多様な分野の専門家が集う、国際的な運動体だ。
イスラームの教えとは、唯一神アッラーの啓示の書「クルアーン」と、預言者ムハンマドの言行録「ハディース」の二つの聖典を拠(よ)り所に、現実社会の生活規範となるよう、時代の事情をくみ慣習を取り入れて体系化したもの。その中には家庭生活における規律が記されており、ムスリム(イスラーム教徒)の人々はそれらを総称して「家族法」と呼ぶ。現在、50カ国以上で適用されているが、それぞれの国の事情によって内容が異なる。
一方、イスラーム社会では男性中心の家父長制が「伝統」の中に根強く存在する。女性は男性に従属すべきであるというイスラームの教えが正当化されている保守的な国々では、婚姻や夫婦生活、相続など、さまざまな領域で女性の権利や人権が損なわれるような家族法が施行されている。

2024年3月に米・ニューヨークで開催された国連女性の地位委員会のサイドイベント「家族法の経済学:ジェンダー平等へのドミノ効果」。家族法における平等のための世界キャンペーンなど9団体がスポンサーを務め、スウェーデン政府、チリ政府、国連女性機関(UN Women)、世界銀行「女性・ビジネス・法律」プロジェクトとともに開催された。約100名が参加した。©2024 Musawah
アラビア語で「平等」を意味するムサーワーは、そうしたイスラーム社会に生きる女性が、最も影響を受ける家族法の改革に焦点を当てる。男性中心の家父長制が根強いイスラームの枠組み(家族法)の中であっても、教えと人権、宗教と女性の権利は調和可能であるとの視点から、イスラームにおける男女平等について考察し、新しい知識や概念を簡潔で理解しやすい言語でまとめ、出版物やウェビナー、動画といった多様な形式で発信している。
また、ジェンダーに基づく暴力の根絶に向け、イスラームの教義や家族法などを学べるセミナーやトレーニングコースを設立。これまで40カ国700人以上の活動家、研究者、政策立案者を対象にプログラムを実施してきた。さらに、今後のビジョンとして、各種研修やワークショップをオンラインと対面で提供するための、グローバルな教育機関の立ち上げを進めている。

ムサーワーの共同創立者で理事長のザイナ・アンワール氏
ムサーワーの共同創立者で理事長のザイナ・アンワール氏は、今回の受賞に際し、「イスラーム社会に生きる女性の地位向上を通して、男女間の平等と正義が、宗教が説く教えにとって不可欠な要素であり、法律、政策、慣習に反映されている世界を実現することが私たちの目標です。この賞は、世界中でより広範に展開しているムサーワーのメンバー、協力者ら全ての努力の証しです」とメッセージを寄せた。
庭野平和賞委員会のムハンマド・シャフィーク委員長(米国、ナザレス大学諸宗教研究対話センター所長)は贈呈理由の中で、「女性が社会、法律、精神の分野において活動を牽(けん)引する機運を醸成した」と評価するとともに、宗教間対話、人権尊重、平和共存において女性のリーダーシップの強化に多大な貢献を果たしていることをたたえた。
贈呈式は5月14日、国際文化会館(東京・港区)で行われ、賞状と顕彰メダル、賞金2千万円が贈られる。