ローマ教皇庁生命アカデミーなどが、広島で「平和のためのAI(人工知能)倫理国際会合」を開催(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇庁生命アカデミーは6月25日、バチカン記者室を通して、広島県で7月9、10の両日に開催される「平和のためのAI(人工知能)倫理国際会合(ローマからの呼びかけにコミットする世界の宗教)」を、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)日本委員会、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ平和フォーラム、イスラエル諸宗教関係首席ラビ委員会と共催することを公表した。

同アカデミーが発表した声明文では、諸宗教者によるAI倫理国際会合を広島で開催する理由として、同地が「破壊的な技術と、絶え間ない平和の追求を具現化した、他に類例のない都市」であると説明。「このシンボリックな都市で、世界主要宗教の指導者たちが、『AI倫理のためのローマからの呼びかけ』に署名し、AIが人類の福祉に貢献することを保障するため、AIの発展を倫理原則によって誘導していくことの重要性を主張する」と示している。

同アカデミーは2020年、「AIシステムは、人間と、人間の住む環境に奉仕し、保護することを考慮して、設計、実行されなければならない」とする公文書「AI倫理のためのローマからの呼びかけ」を作成。国際組織、政府、企業に対し、人間を中心としたデジタル刷新と技術改革を促進していくための責任を共有するよう訴え、公文書への署名運動を展開してきた。

同年2月28日にバチカンで執り行われた署名式典では、欧州議会議長の臨席のもと、同アカデミー、マイクロソフト、IBM、国連食糧農業機関(FAO)、イタリア政府代表者が署名した。翌23年には、アブラハム信仰(ユダヤ教、キリスト教、イスラーム)の指導者によって署名され、今年4月24日には、バチカンで、世界最大のコンピューターネットワーク機器開発会社のシスコシステムズが、30日には英国国教会の最高指導者であるジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大主教が署名した。

広島での国際会議の開会式では、共催団体の指導者によるあいさつに次いで、ローマ教皇庁立グレゴリアン大学技術倫理学教授のパオロ・ベナンティ神父が「生成AI」について講演する。この内容は、「ローマからの呼びかけ」に補足として挿入されるという。

また、初日は、「科学的展望/AIの危険性と好機」「技術的展望/AI倫理の実践的適応」「AIの管理」についての三つのセッションを中心に展開され、諸宗教指導者が発言する公聴会も開かれる。

2日目には、世界の諸宗教指導者による「ローマからの呼びかけ」に対する署名式典が執り行われる。その後、参加者は被爆者の証言に耳を傾け、平和記念公園を巡礼し、犠牲者たちの霊を弔う。会議終了後には、宣言文が公表される予定だ。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)