北海道支教区が仏教経営セミナー 北の大地に「六花の会」が発足
経営者として互いの悩み苦しみに寄り添う、そして、各自が企業のリーダーとして菩薩行の在り方を研さんし、人としての成長を自社の業績アップにつなげていく――。立正佼成会の近藤雅則北海道支教区長が「北海道六花(りっか)の会」の目的を掲げると、参集者は盛大な拍手で応えた。10月22日、本会札幌教会道場で開催された、同支教区初の「仏教経営セミナー」での一幕だ。
「六花の会」は、経営に携わる本会会員(有志)によって2018年に発足した全国的なネットワーク。今回、経営者や個人事業主、起業希望者、参加者の所属教会の教会長ら37人が参集した。
当日は、近藤支教区長のあいさつに続き、庭野日敬開祖と京セラの故・稲盛和夫名誉会長から薫陶を受け、多くの企業再建に携わった故・福永正三氏(滋賀教会会員)の講演をまとめたVTRを上映。次いで、福島・本宮市で会計事務所の代表を務めるS氏(62)=福島教会=による「経営実践講演」が行われた。
S氏は、東京の税理士法人で勤務した後、亡き父親の興した会計事務所を継ぐため31歳で帰郷したが、上から目線の態度が災いし、引き継いだ取引先をいくつも失い、年収が10分の1に減少するなどの苦境に直面した体験を披歴。その後、本会会員である妻の勧めで郡山教会主催の「企業繁栄研究会」に参加し、「ドブにネズミ、花に蝶」との言葉から、縁起観に照らして内省した当時を振り返った。その上で、「自らがリーダーとして『花』になる」と決意し、宿直など教会の役を通して心を高め、職場では掃除のほか、笑顔とあいさつの実践に努めたことを報告。依頼人への真摯(しんし)な対応を心がけた結果、不思議と口コミで顧客が増え、経営が安定していったと語った。
また、コロナ禍で出張業務が減り、社内で過ごす時間が増えた際は、社員の仕事ぶりや個性をじっくりと見つめる機会にできたと述懐。社員の頑張りによって会社が成り立っていることを痛感し、「(社員の)長所も欠点も全てが愛(いと)おしく感じられるようになった」と振り返った。これを機に、社員、取引先はじめ全ての人の喜びを目指して仕事をするため、「笑顔と幸せを実現する」を経営理念に定めたことを紹介。さらに、経営理念の実現を社員に委ねた結果、各自が考え、行動し、その反省や改善案を分かち合い、次の行動に生かす好循環が社内に生まれたと報告した。ここで育まれた社員の「主体性」は、時代と共に変化する顧客のニーズに対応する大きな力になると強調し、「どうしたらお客さまに喜んでもらえるか、より価値の高いサービスを提供できるかを自分で考えて行動する社員の存在が、組織を強くします。(社員評価は)失敗することよりも、挑戦しないことの方が減点です」と語った。
午後、参加者は昼食会で親睦を深めた後、グループ討議に臨み、事業の継承や販路拡大といった自社の抱える課題などを語り合った。最後に、大畑昌義同会推進責任者が総評に立ち、北の大地に誕生した「六花の会」に、はなむけの言葉を贈った。