中央アジアで発展する諸宗教間対話(海外通信・バチカン支局)

「ムスリム長老評議会」(アラブ首長国連邦)のモハメド・アブデルサラム事務総長と、カザフスタンの「諸宗教・諸文明間対話発展のためのナザルバエフ・センター」のブラト・サルセンバエフ所長は11月11日、カザフスタンの首都アスタナで懇談し、「中央アジアにおける諸宗教・諸文明間対話を発展させ、特に、若年層に広がる誤解を解き、寛容と共存を促進するための覚書」に署名した。アラブ首長国連邦の国営通信社「エミレーツ・ニュース・エージェンシー」が同日、アスタナから伝えた。

サルセンバエフ所長は、イスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」(エジプト・カイロ)のアハメド・タイエブ総長を議長とする同評議会が「対話と共存を促進していくために貢献している」と称賛。タイエブ総長が「第7回世界伝統宗教指導者会議」(9月、アスタナ)と「対話のためのバーレーン・フォーラム――東洋と西洋の人類共存のために」(11月、バーレーン)に参加し、両会議でローマ教皇フランシスコと出会い、対話したことを評価した。

アブデルサラム事務総長も、同センターと同評議会の間で、諸宗教・諸文明間対話に関して交わされた覚書が、「カザフスタンと中央アジアにおいて、共存、寛容、平和を促進していくに違いない」との確信を表明した。さらに、同事務総長は、諸宗教・諸文明間対話を確立するためのカザフスタンの努力をたたえ、同会議の成果として、「人類の友愛に関する文書」を対話のための重要な源泉として採択したことを評価した。

また、覚書の調印式典に参加したカザフスタン上院のマウレン・アシンバエフ議長は、「中央アジア圏諸国で対話を促進していくため、国内にムスリム長老評議会の支部を創設する」との意向を表明した。

タイエブ総長は、「対話のためのバーレーン・フォーラム」のスピーチで、イスラーム世界で歴史的に対立してきたスンニ派、シーア派間での対話と和解を提唱した。これを受け、シーア派を人口の主流とするイランは、「対話の呼びかけに応じて使節団を派遣し、交流する用意がある」との意向を明らかにした。イランの「メフル通信社」が12日に報じた。

イランの「イスラーム思想学院間での接近のための世界フォーラム」は、「イスラーム世界における現実問題の一つは、他のムスリムを異端視するムスリムの存在だ。イスラーム世界においては、安全と安定が確立されなければならない。安全と安定は、イスラーム間対話によって実現される」と主張し、タイエブ総長の提案を受け入れた。同フォーラムは、タイエブ総長をイランへ招待するほか、イスラーム間対話をイランで始めていく用意があると表明した。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)