気候問題の解決のために先住民の智慧を――WCRP/RfPなどがCOP26参加者に訴え(海外通信・バチカン支局)
米国と世界の聖公会、熱帯雨林保全のための諸宗教イニシアチブ、世界宗教者平和会議(WCRP/RfP)、世界教会協議会(WCC)は11月3日、英国グラスゴーで開かれていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の公式サイドイベントとして、『自然との和平構築――先住民からの呼びかけに応えて』と題する会議をオンラインで開催した。
同会議は、気候変動の問題は先住民の権利と精神性を認知することなしには解決できないとの考えから、北極圏から赤道までの地域で生活する先住民たちの声を届け、COP26で取り上げられるようにすることが目的。この取り組みは、米国の「宗教ニュースサービス通信社」(RNS)や「ワシントン・ポスト」紙で報道された。
オンライン会議でスピーチしたWCRP/RfP国際委員会のアッザ・カラム事務総長は冒頭、「私たちの肺を(環境汚染から)守ることと、先住民の(権利と精神性の)擁護は共に進めなければならないもの」と発言。諸宗教指導者たちは、信徒たちと進める環境保全が実践的な意味合いだけでなく、霊的、倫理的、宗教的な意味からも努力していく大切さを確認した。
ユダヤ教のラビで、米国ユダヤ人協会諸宗教対話部長のデビッド・ローゼン師(WCRP/RfP国際共同会長)は、「私たちの地球を保全し、世界を守り、自然の生体系を維持していくことは、宗教的義務である」と呼びかけた。これらの考えを支持する諸宗教指導者たちは、世界の人々、特に各国首脳や政治家に対し、与えられた土地をどのように保全していくかについて、文明の黎明(れいめい)期から土地を守り、自然と共に生きてきた先住民の声に耳を傾けるように促している。
米国聖公会のマーク・アンドゥルース主教(カリフォルニア教区、COP26聖公会使節団団長)は、「先住民の声に耳を傾けるためには、先住民の権利と彼らの土地を奪い植民地主義の正当化に加担した、欧州キリスト教の役割を反省することから始める必要がある」と主張する。そうした過去の過ちから学び、米国聖公会は、熱帯雨林保全のための諸宗教イニシアチブに参加し、国連や信仰を基盤とする諸宗教の共同体と連携し、世界の熱帯雨林の保全、先住民の権利擁護のための取り組みを展開していると報告した。さらに、「彼らのため」「彼らに代わって」「彼らの周辺で」活動するのではなく、「彼らと共に」努力していくことが重要と強調した。
また、フィンランド・ルーテル教会牧師で、WCC先住民問題担当グループのマリ・ヴァリャッカ議長は「グリーンエネルギー植民地主義」という言葉を使って、北極圏で生活する先住民「サーミ」が風力発電などのグリーンエネルギー推進によって大きな犠牲を被らないかと憂慮の念を示した。現在、北極圏は採鉱、森林伐採のほか、風力発電などに利用できる土地として注目されつつあり、先住民が暮らす土地が、エネルギー開発の地となる恐れが高まっているからだ。その場所は、先住民にとって「聖なる土地、生がもたらされる土地であり、家、教会にあたる土地である」と伝え、生活を支えてきた漁、トナカイや馬の飼育などの伝統的な暮らしができなくなることへの懸念を訴えた。
カナダの先住民出身で、北米WCC幹事のマーク・マクドナルド大司教(聖公会)は、「諸宗教指導者と先住民のパートナーシップは、信仰者にとって重要である」と主張。その理由を、「信仰を持つ全ての人々が、先住民の生き方、哲学の中に(人間の)生存を可能とし、地球(環境)を持続させていくための叡智(えいち)を見いだすことができるからだ」とし、先住民の生き方と哲学が、連帯を促進し、創造界(自然)と全人類との交わりの間に調和を生み出すと述べた。
さらに、「先住民文化の根底にある物事を洞察する力が、私たちの未来についても本質的な役割を果たす」と語り、「先住民に注目し、彼らの声に耳を傾け、理解することによって、生命を見いだしていこう」と呼びかけた。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)