バチカンから見た世界(114) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

地球と民の悲鳴に耳を傾けよ――キリスト教の3指導者が歴史的アピール

10月4日は、アッシジの聖フランシスコ(1182-1226)の祝日にあたる。

中世期のカトリック教会改革者であるこの聖人は、貧しさ(清貧)を自身の“花嫁”と呼び、「太陽の賛歌」(“兄弟なる太陽、姉妹なる月”)を通して神による創造の業(わざ)の美を謳(うた)った。キリスト教界では、環境保護の聖人ともされている。

世界のキリスト教界では、聖フランシスコの祝日までの1カ月間を「創造の季節」としている。22億のキリスト諸教会の信徒たちが、神に創造された自然と人間との関係について祈り、黙想し、その保全のために行動を起こす期間となる。

今年の「創造の季節」のテーマは、『皆が住む一つの家?――神が宿る家の保全への努力を新たにしよう』。ローマ教皇フランシスコ、東方正教会の精神的指導者であるバルトロメオ一世・エキュメニカル総主教、英国国教会のジャスティン・ウェルビー・カンタベリー大司教は、10月31日から11月12日まで英国グラスゴー(スコットランド)で行われる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)も視野に入れた合同メッセージを公表した。3人のキリスト教指導者が一緒にメッセージを公表するのは、キリスト教史上、初の出来事だ。

メッセージには、「世界の指導者たちが11月にグラスゴーに集い、私たちの地球の未来についての決断を下そうとしている。私たちは彼らのために祈り、どのような選択をしなければならないかについて考察する」と明記。「キリスト教諸教会の指導者として、世界の指導者たちが有する自身の信仰や世界観にかかわらず、この地球と貧しき人の悲鳴に耳を傾けることに努め、神が私たちに与えられた地球のために、自身の行いを見つめ直しながら有意義な犠牲を誓約していくように、全ての人に呼びかける」と述べている。